企業が知っておくべき『心的外傷後ストレス障害(PTSD)』について
障がい

2021年11月15日

企業が知っておくべき『心的外傷後ストレス障害(PTSD)』について

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とはトラウマ(心的外傷)になるような、命が脅かされる出来事や重篤なけがなどの圧倒的な出来事によって、激しい精神的な苦痛が現れる疾患です。
今回はPTSDの方を雇う際、定着させる際に知っておくべき基本知識、配慮例などについてお伝えいたします。

目次

 

⑴ 『心的外傷後ストレス障害(PTSD)』とは?

PTSDとは、Post Traumatic Stress Disorderの略です。
簡単にいうと恐怖体験が心(脳)に衝撃を与え、心的な傷を作ることにより、様々な精神的な苦痛が現れる疾患です。
事故や災害、暴力、犯罪、戦争などを本人が経験したり、間接的に経験したり(他人の重症、殺害を目撃したり、近親者や友人に外傷的な出来事が起きたことを知ったり)することで、発症することがあります。

■症状例■
1.侵入症状
その恐怖体験が突然フラッシュバックしたり、頻繁に追体験したり、繰り返し悪夢を見たりする症状です。
例えば、海難事故での恐怖体験は海の映像や水音、戦争での恐怖体験は銃声に似た花火の音などで思いだすことがあります。

単に、記憶として思いだすだけでなく、その場でそれを体験しているように鮮明に思いだし、感情があふれ出したり現実がわからなくなったりすることもあります。

2.回避症状
トラウマを感じるような場所、人、モノなどを避ける症状です。
意識的、もしくは、無意識的にトラウマから逃げることで、行動が制限され、一般的な生活が送れなくなるということも少なくはありません。
人との交流や外出を避けることで孤独感を感じやすくなるという面もあります。

また、趣味や仕事に没頭してそのことを考えなくする、感情を麻痺させる、記憶自体がなくなるといった症状が出る方もいます。

3.日常生活への長期間の悪影響
辛い記憶を思い出していない平常時でも常に緊張が続き、過敏な症状が起きることがあります。
例えば、イライラしている、物音や光に過剰に反応する、思考力が低下する、感情のコントロールが難しくなる、不眠、警戒心が強いなどです。
否定的な考えやネガティブな感情が浮かびやすい傾向の方もおり、うつ病や不安障害などの精神疾患を合併することも多いです。

また、それらの感情を紛らわすようにアルコールや薬物に依存する可能性も高いのも特徴です。

このように外傷的な怪我や障がいと違って目に見えず、他人に理解されづらいのがこの障がいの特徴です。
また、「本人にも説明できない」「自覚がない」症状がある場合もあり、悪化につながることもあります。
病院や適切な機関での治療を受け、こころの傷の回復とつらい症状の軽減の両方を行っていくことが大切です。

 

⑵『(単純性)PTSD』『複雑性PTSD』とは?

『複雑性PTSD』という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

ICD-11(国際疾病分類第11版)では、『(単純性)PTSD』と『複雑性PTSD』は分けて述べられています。
簡単にいってしまうと、『(単純性)PTSD』はレイプや痴漢、交通事故など1度の出来事に由来し、『複雑性PTSD』は継続的な虐待やいじめなど、慢性的な状況に由来するといわれています。
また、複雑性PTSDは、「感情のコントロールの困難さ」、「自己卑下・自己否定」、「他者との関わりの困難さ」という3つの特徴が深刻であるといわれています。

⑶ 接し方のポイントや具体的な配慮例

それでは、PTSDの方への接し方のポイントと具体的な配慮例を見ていきましょう。

■接し方のポイント
まずは本人の話をしっかりと聞き、本人が受けた恐怖体験、トラウマ、現在の症状を認めるようにしましょう。
「大丈夫だ」「そんなはずはない」「思い込みだ」「考えすぎだ」という声かけは、気持ちを否定することになり、逆効果といわれています。

大切なのは「その恐怖体験があったのであれば、その症状がでるのは当たり前」と症状を認め、自然であると捉えることができるような声かけをすることです。
また、周囲の人たちも無理は禁物です。抱え込まず、専門家や医療のサポートを受け、一緒に対応していきましょう。

■具体的な配慮例
・短時間勤務(短時間からスタートさせる)
・業務担当の変更(トラウマ、ストレスを感じさせる環境から離す)
・プレッシャーの強い仕事や過度な残業を避ける
・ラッシュ時を避けた通勤
・定期通院の配慮

上記のように、無理させない・安全な環境を確保するということが大切です。
また、そのためにもご本人による自身の障がい理解が必要不可欠です

 

⑷ まとめ


今回は、企業が知っておくべき『心的外傷後ストレス障害(PTSD)』についてをまとめました。
当社は『心的外傷後ストレス障害(PTSD)』をお持ちの障がい者の方からも、数多く転職のご相談を頂いておりますので、お気軽にご相談ください。


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