保育の五領域とは?五領域の要素を取り入れた保育例について紹介
保育の現場で働く人にとって、重要な指針となるのが保育所保育指針の「五領域」。子どもの健やかな成長に必要な要素が示されているため、日々の保育に積極的に取り入れる必要があります。
この記事では、3歳以上の子どもを対象にした「五領域」と、関連する「3つの柱」と「10の姿」について解説します。どのような保育を行うべきかを見直すきっかけにするためにも、ぜひ最後までお読みください。
1. 保育の五領域とは?
保育の五領域とは、保育所保育指針が教育方針や保育の狙いなどを示したもので、5つの要素で構成されます。
● 健康
● 人間関係
● 環境
● 言葉
● 表現
子どもの成長に携わる職業の方には、必要不可欠な知識と言えるでしょう。
ここでは、厚生労働省が2017年に改定し2018年4月から適用となった「保育所保育指針」をもとに、3歳以上の子どもを対象とした5領域の狙いや内容について解説します。
以下、表は厚生労働省「保育所保育指針」参照
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000160000.pdf
■健康
3歳を過ぎる頃になると、基本的な動作や生活習慣が身に付き、自分のことを自分でできるようになり始める頃です。
そこで、この時期の子どもには、健康で安全な生活を作り出すための力を養うことを目的とした狙いが定められています。
狙い | 1. 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。 2. 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。 3. 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。 |
内容 | 1. 保育士等や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。 2. いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。 3. 進んで戸外で遊ぶ。 4. さまざまな活動に親しみ、楽しんで取り組む。 5. 保育士等や友達と食べることを楽しみ、食べものへの興味や関心をもつ。 6. 健康な生活のリズムを身に付ける。 7. 身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排せつなどの生活に必要な活動を自分でする。 8. 保育所における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する。 9. 自分の健康に関心をもち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。 10.危険な場所、危険な遊び方、災害時などの行動の仕方がわかり、安全に気を付けて行動する。 |
健康とは、心と体の両方が健全であることを意味します。そのためには、まず食事による体づくりや基本的な生活習慣を身に付けることが大切。
そして、体を使うことの楽しさを知り、自ら進んで戸外遊びを行えるように支援します。この時期は行動範囲が一気に広がるため、身近な生活に潜む危険について事前に学ぶ機会をもちましょう。
■人間関係
この時期の子どもは、自分以外の人の存在に気付き始めます。集団遊びや共同的な活動を通して人間関係が形成され、仲間意識が芽生える大切な時期。日頃の保育では自立心を育むと同時に、人と関わる力を養うことを意識しましょう。
狙い | 1. 保育所の生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。 2. 身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり、協力したりして一緒に活動する楽しさを味わい、愛情や信頼感をもつ。 3. 社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。 |
内容 | 1. 保育士等や友達とともに過ごすことの喜びを味わう。 2. 自分で考え、自分で行動する。 3. 自分でできることは自分でする。 4. いろいろな遊びを楽しみながら物事をやり遂げようとする気持ちをもつ。 5. 友達と積極的に関わりながら喜びや悲しみを共感し合う。 6. 自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。 7. 友達のよさに気付き、一緒に活動する楽しさを味わう。 8. 友達と楽しく活動する中で、共通の目的を見いだし工夫したり、協力したりなどする。 9. よいことや悪いことがあることに気付き、考えながら行動する。 10. 友達との関わりを深め、思いやりをもつ。 11. 友達と楽しく生活する中できまりの大切さに気付き、守ろうとする。 12. 共同の遊具や用具を大切にし、皆で使う。 13. 高齢者をはじめ地域の人々などの自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみをもつ。 |
子どもが家庭の外で初めて人間関係を築く相手は保育士です。まずは安心して信頼できる存在であることを子どもに伝えましょう。
そして、徐々に子ども同士が関わる機会を増やし、道徳性や協調性を養います。自分自身に対する自信を高めつつ、仲間の存在を認められるように配慮しましょう。
■環境
子どもの好奇心や探究心を高めるためには、多様な環境を提供することが大切です。
狙い | 1. 身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中でさまざまな事象に興味や関心をもつ。 2. 身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れようとする。 3. 身近な事象を見たり、考えたり、扱ったりする中で、ものの性質や数量、文字などに対する感覚を豊かにする。 |
内容 | 1. 自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く。 2. 生活の中で、さまざまなものに触れ、その性質や仕組みに興味や関心をもつ。 3. 季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。 4. 自然などの身近な事象に関心をもち、取り入れて遊ぶ。 5. 身近な動植物に親しみをもって接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたりする。 6. 日常生活の中で、我が国や地域社会におけるさまざまな文化や伝統に親しむ。 7. 身近なものを大切にする。 8. 身近なものや遊具に興味をもって関わり、自分なりに比べたり、関連付けたりしながら考えたり、試したりして工夫して遊ぶ。 9. 日常生活の中で数量や図形などに関心をもつ。 10. 日常生活の中で簡単な標識や文字などに関心をもつ。 11. 生活に関係の深い情報や施設などに興味や関心をもつ。 12. 保育所内外の行事において国旗に親しむ。 |
子どもの発達が進むと、周囲のさまざまなものに興味を示し出します。豊かな感性を育むためには、特に動植物に触れることが重要。
また、日本の文化や伝統に親しむ機会を設け、異文化や異人種への意識付けも積極的に行いましょう。
■言葉
この頃の子どもは、自分の考えや思い、経験したことなどを自分の言葉で伝えようとします。
また、相手の言葉に耳を傾ける姿勢が見られるため、会話が成立することの喜びを感じられるようにサポートしましょう。
狙い | 1. 自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。 2. 人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。 3. 日常生活に必要な言葉がわかるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、言葉に対する感覚を豊かにし、保育士等や友達と心を通わせる。 |
内容 | 1. 保育士等や友達の言葉や話に興味や関心をもち、親しみをもって聞いたり、話したりする。 2. したり、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現する。 3. したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、わからないことを尋ねたりする。 4. 人の話を注意して聞き、相手にわかるように話す。 5. 生活の中で必要な言葉がわかり、使う。 6. 親しみをもって日常の挨拶をする。 7. 生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。 8. いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。 9. 絵本や物語などに親しみ、興味をもって聞き、想像をする楽しさを味わう。 10. 日常生活の中で、文字などで伝える楽しさを味わう。 |
保育の現場では、子どもが自分の思いをうまく言葉にできずに困惑してしまう場面に遭遇することも少なくありません。
言葉の発達には大人の介入が必要不可欠ですので、子どもの言葉を受け止めながら、その思いを表現できるよう支援しましょう。また、絵本の読み聞かせや歌のように、言葉の発達を促すための働きかけも大切です。
■表現
感じたことや考えたことを表現する方法は言葉だけとは限りません。
豊かな感性や表現する力を養うことで創造性を豊かにし、歌や制作物などで自由に表現できる力を育みましょう。
狙い | 1. いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。 2. 感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。 3. 生活の中でイメージを豊かにし、さまざまな表現を楽しむ。 |
内容 | 1. 生活の中でさまざまな音、形、色、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして楽しむ。 2. 生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。 3. さまざまな出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。 4. 感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりなどする。 5. いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。 6. 音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わう。 7. かいたり、つくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり、飾ったりなどする。 8. 自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりするなどの楽しさを味わう。 |
表現力はさまざまな体験を通じて育まれるもの。保育士は子どもにさまざまな経験や気付きを与え、感じたことを共有することで、表現したいという意欲を高めることができます。
日頃から子どもの些細な表現を見落とさず、いつでも自由に表現できる環境を整えておくことが大切です。
2. 五領域の要素を組み合わせた保育例
日頃の保育で当たり前のように取り入れている遊びも、実は子どもの発達には欠かせない五領域の要素を満たしています。
ここでは、五領域の要素を組み合わせた保育例を紹介します。
■散歩
日課として、園の近くの公園などに散歩に出かける保育所も多いでしょう。
ゆっくりと歩きながら、植物や虫など季節を感じられるものを探すことは、子どもの好奇心をかき立てます。春であればたんぽぽやつくし、秋であれば落ち葉やどんぐりなどが見つかり、五領域の要素を満たしてくれるでしょう。
領域 | 狙い |
健康 | 安全に配慮しながら、体を動かすことの楽しさを覚え戸外への興味・関心が高まる |
人間関係 | 散歩のルールを守り、お友達と積極的に関わろうとする |
環境 | 季節の自然に触れ、美しさや生命の不思議に気付く |
言葉 | 目にしたものの形や色を言葉で表現したり、疑問に感じたことを問いかけたりする姿が見られる |
表現 | 目にした自然のにおいを嗅いだり、虫の動きを真似したりする楽しさを覚える |
■水遊び
水遊びは危険を伴うため、子どもと一緒にしっかりとルールを確認しましょう。
また、水遊びを苦手とする子どもには必要に応じて支援し、水遊びの楽しさを伝えるところから始めます。水遊びでは、子ども同士でおもちゃの使い方や遊び方を、教え合ったり話し合ったりできるような言葉がけをすると、より楽しさを感じやすくなるでしょう。
このような働きかけによって、子どもの考える力が育ち、仲間意識を強めることができます。
領域 | 狙い |
健康 | 水の冷たさを肌で感じ、いつもとは違う動作を楽しむ |
人間関係 | 水遊びのルールを守り、子ども同士で遊ぶ楽しさを知る |
環境 | 水の音や感触を楽しみ、水の中で暮らす動物などに興味を持つ |
言葉 | 「冷たい」「気持ちいい」など、感じたことを言葉にする |
表現 | 水に手を叩きつけて水しぶきを表現したり、楽しい感情を体全体で表現したりする |
■お店屋さんごっこ遊び
年中、年長クラスの子どもになるとお店屋さんごっこを楽しむようになるでしょう。これは、人間関係や言葉の発達が進んでいる証拠です。
保育でお店屋さんごっこ遊びを取り入れる場合は、お金や商品を手作りするところから始めましょう。子どもにとって親しみのあるお店を題材にするとイメージしやすく、遊びが発展しやすくなるのでおすすめです。
店員役とお客様役の役割分担を子どもに決めてもらい、役になりきって遊びを楽しみましょう。
領域 | 狙い |
健康 | お金や商品を作る際、ケガをしないための道具の正しい使い方を学ぶ |
人間関係 | 子ども自らお店屋さんごっこに必要なルールを作ったり、役割を決めたりする |
環境 | お金やお店の役割を知り、社会や数字に興味を持つ |
言葉 | 「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」など、遊びに必要な挨拶を身に付ける |
表現 | 店員役とお客様役の両方を経験し、言葉使いや演技を楽しむ |
■フルーツバスケット
ルールを守り、友だちと一緒に体を使って遊ぶならフルーツバスケットがおすすめです。
事前に子どもとルールを共有し、同じ子どもが鬼を続けることがないように配慮しながら楽しみましょう。
領域 | 狙い |
健康 | 鬼の声がけで瞬時に目的の場所を判断し、友達とぶつからないように気を付けながら移動する |
人間関係 | 仲間同士でルールを共有したり、グループとしての仲間意識を高めたりする |
環境 | 子ども自らイスを並べて遊ぶ環境を整えたり、グループの札を作ったりする |
言葉 | 座れない仲間に残っているイスの場所を知らせたり、周囲の声に反応して移動したりする |
表現 | ゲームを通じて感じたことや鬼の難しさ、楽しさなどを子ども同士で意見を交換する |
3. 保育の「3つの柱」と「10の姿」について
2018年に改定された保育所保育指針では、小学校とも連携できるような保育をすることが求められています。
保育と教育を切り離さずにつながりを持たせるため、五領域に加えて「3つの柱」と「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が設定されました。
■3つの柱
3つの柱とは、「保育を通して育みたい資質・能力」のことです。
1. 知識および技能の基礎:豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、わかったり、できるようになったりする
2. 思考力・判断力・表現力などの基礎:気付いたことや、できるようになったことなどを使い、「考える」「試す」「工夫する」「表現する」
3. 学びに向かう人間性:心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする
3つの柱は、これまでに紹介した五領域とこれから紹介する10の姿と併せて、保育の中で子どもに身に付けていくことが望ましいとされています。
■10の姿
10の姿とは、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を10の視点で示したものです。
小学校入学前の子どもに備わっていてほしい力が具体的に示されています。
1. 健康な心と身体
2. 自立心
3. 協同性
4. 道徳性・規範意識の芽生え
5. 社会生活との関わり
6. 思考力の芽生え
7. 自然との関わり・生命尊重
8. 数量・図形、文字などへの関心・感覚
9. 言葉による伝え合い
10. 豊かな感性と表現
「3つの柱」と「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」は、あくまでも子どもの成長・発達の目安です。卒園時にこうであるべき、という意味ではありません。
さまざまな力をバランスよく兼ね備えた子どもに成長するように、これらの指針を意識した保育に取り組みましょう。
4. まとめ
保育所保育指針に基づき、子どもの成長に不可欠な五領域について紹介しました。
「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の要素を取り入れて行う保育は、いずれも子どもの健全な成長にとって重要な視点です。
一つひとつの遊びや生活の中にさまざまな要素が含まれていることを意識し、毎日の保育に励みましょう。
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