【障害特性・シーン別対応解説付き】発達障害のある方と一緒に働く上でのポイントとは?
実際に障害のある方と一緒に働く際、どのように対応したらよいか困惑してしまうことはありませんか?
「どのような準備をすればいいのかわからない」「どのように接していいかわからない」「業務指示の出し方がわからない」など、発達障害の方が実際に働く現場である『受け入れ部署』の方に向けて、発達障害の方と一緒に働く上で押さえておきたいポイントや障害特性の解説、シーン別の対応方法について解説します!
1.はじめに
まず、『発達障害』といってもその障害の種類は多くあります。また同じ障害でもその特性や程度は人それぞれです。
そのため、ここでご紹介する対応方法が、必ずしも全員に当てはまるとは限りません。
何よりも大切なのは、一緒に働く人を『障害のある人』として捉えるのでなく、あくまで『ひとりの個人』として受け入れることが大切です。
◎障がい者雇用を推進するためには
障がい者雇用を進めていくためには、まず『経営者の姿勢』が重要です。
社員への理解を促すために、まず経営者が社員に対して企業の経営方針として障がい者雇用を推進することを明らかにしましょう。
社会的な背景はもちろん、会社として推進していく意義など前向きなメッセージを伝えるようにすると、社員の受け入れ姿勢が整ってきます。
また、受け入れ部署にすべてを任せるのではなく、①経営者 ②人事担当者 ③受け入れ部署の社員の3方が共通の認識を持ち、コミュニケーションを図りながらそれぞれの役割を果たすことで、障がい者雇用を推進していくことができます。
障がい者に関して、社員の理解を深めるために、社内研修や社内報を利用して周知するのも効果的でしょう。
2.発達障害とは
発達障害は、脳機能の発達が関係する先天的な障害です。生まれながらに脳の働きに偏りがあり、行動面や情緒面で様々な特性として現れます。
※障害の種類・特性は「4.障害特性と配慮のポイント」でお伝えします
発達障害がある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手なことが多いです。その行動や態度を見て、周囲から「自分勝手」「変わった人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。
しかし、その行動の原因は、親のしつけや本人の本質ではなく、脳機能の障害によるものです。このことを周囲の人が理解すれば、接しかたも変わってくるのではないでしょうか。
発達障害があっても、本人や職場の人が特性に応じた日常生活や職場での過ごし方を工夫することで、本人が持っている力を活かしやすくなったり、日常での困難を軽減させたりすることができます。
3.知っておきたい職場での配慮項目
まずは、発達障害の方を受け入れる際に企業側で準備しておくと良い4つの配慮項目についてご説明します。
⑴本人のスキルや特性に応じての業務決定・環境整備
冒頭で説明した通り、『発達障害』と一口に言っても、1人ひとり障害の程度や特性は異なります。また、仕事におけるスキルも同様です。
まずは事前に本人へヒアリングをし、可能な業務や得意/不得意な業務、配慮してほしいことを確認しておきましょう。
・感覚が過敏な人には聴覚・視覚へ刺激の少ない環境を整備する。感覚が鈍磨(疲れに気づきにくい等)な人には、定期的に気づきを促すような声掛けをする。
<補足>
業務内容を選定する際、「専門的な知識が必要な業務が多いが大丈夫だろうか?」という心配の声が多く聞かれます。
障害特性により対応できない業務もありますが、専門知識が無くても特定の分野であれば力を発揮できたり、本人の努力や企業側からのサポートによって、従事する業務の幅が広がる可能性もあります。
発達障害の方に任せる仕事内容は、限定的に考えるのではなく、本人の持っている能力や強みを活かせる業務であったり、企業に貢献できる業務を新しく創出するなど柔軟に考えることが大切です。
⑵職場ルール・職場文化等の視覚化
発達障害の方の中には、人への関心が乏しかったり、他者からのメッセージを読み取ることが苦手な方もいます。
また、「しばらく従事していればなんとなく身につくだろう」と思っていても、なかなか社内ルールや文化に順応できていない場合があります。
いわゆる『暗黙のルール』では、本人には伝わらないのです。
<例>
・聴覚より視覚が優先され、口頭での業務指示をうまく受け取ることが難しい
・与えられた範囲以外の仕事を推測し、自発的に取り組んだりすることが困難
・立場を変える、場を理解することが苦手
そのため、確実に守るべきルールを可視化したり、抽象的な表現や曖昧な言葉は使わず、明確に伝える必要があります。
・抽象的な表現や曖昧な言葉は使わないようにする。
⑶段取り・先の見通しの明示
人によっては、見通しの立たない状況や、急な変更に対して強い不安やストレスを感じる方がいます。
反対に、ルールや決まり事を大切にするため、見通しが立つときはきっちりしていることもあります。
このような不安を軽減するためには、業務指示の出し方を工夫すると効果的です。
・変化を恐れるため、残業や納期などの変更事項は早めに伝える。
・複数のことを担当すると優先順位が分からなくなるため、優先順位をメモや文章で明示する。
⑷健康維持
発達障害の方の中には、思いがけない理由でメンタル面が不調になる人もいます。また、自身で不調を感じ取ることが苦手な人もいるため、普段からコミュニケーションをとって、状況を把握することが大切です。
・本人の疲れやストレスへ配慮する。(休憩の声かけなど)
出典:出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構『はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~』
4.障害特性と配慮のポイント
引用:政府広報オンラインより筆者作成
⑴自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)
◎他者にメッセージを伝えたり、他者からのメッセージを読み取ったりすることが苦手
・人への関心、反応が乏しい/大きすぎる
・言葉、表情、ジェスチャーがうまく使えない
◎職場の人との接し方がうまくできない
・誰にどのように接していいのか分からない
・タイミング良く質問することが苦手
・暗黙のルールが分からず混乱する
◎視覚/聴覚/味覚/嗅覚/触覚の感覚過敏、感覚鈍磨が見られる場合がある
【配慮のポイント】
◎本人を良く知る家族や、専門家にサポートのアドバイスを聞く
◎伝え方を工夫する
・分かりやすさ:多くを詰め込まず、シンプルに伝える
「▲▲で△△のため〇〇を~にしましょう」→「〇〇をしましょう」
・具体性:抽象的な表現はなるべく使用せず、具体的に伝える
「しばらくお待ちください」→「5分ほどお待ちください」
◎スモールステップで支援する
・業務手順:どのように業務を進めればいいか手順を示す
・完成イメージ:お手本やモデルを見せる
・混乱を避けるため、新しい挑戦は少しずつ行う
◎感覚過敏への配慮(音・肌触り・室温・光など)
・大声で説明せず、ホワイトボードを使用して伝える
・人とぶつからないように席を設置する
・クーラー設備のある部屋を利用する
・パーテーションの使用を認める
・イヤホンの着用を認める
⑵学習障害(限局性学習障害)
◎「話す」「理解する」に対して、「読む」「書く」「計算する」ことが苦手
【配慮のポイント】
◎本人を良く知る家族や、専門家にサポートのアドバイスを聞く
◎苦手な部分については、課題(業務)の量や質を適切に調整したり、柔軟な評価をする
⑶注意欠如・多動性障害
◎注意が散漫で気が散りやすい(不注意)
・不注意によるミスが多い場合がある
◎じっとしていられない(多動性)
・一つの業務を集中して続けることが難しい場合がある
◎何顔も追いつくと後先考えず行動してしまう(衝動性)
・仕事を順序通りに進められない場合がある
【配慮のポイント】
◎本人を良く知る家族や、専門家にサポートのアドバイスを聞く
◎短く、はっきりと伝える
◎集中できる座席位置の工夫
◎わかりやすいルール提示などの配慮
◎ストレスケア
・本人が傷ついた体験に対して寄り添う
・適応行動ができたことへのこまめな評価
5.シーン別「こんなときどう対応する?」
これまでの説明の中でも分かる通り、発達障害の中には多くの種類があり、同じ種類でも特性やその程度はさまざまです。
「話しかけるのに躊躇してしまう」「注意をしてもいいのかわからない」「指摘の仕方が分からない」など、ここでは比較的多くの人に共通する職場での接し方の例をシーン別にご紹介します。
シーン1:出勤初日の声かけどうしよう
シーン2:仕事中、何かに困っていそう
状況によっては、本人の困りごとに対して回答できることもあるかもしれません。しかし、その場合注意しなければいけないのが、『人によって伝えている内容が同じかどうか』ということです。
「この業務について教えてもらったけど、AさんとBさんで言っていることが違う」と感じてしまうと、発達障害の方はとても混乱します。
困りごとを聞いたうえで、指導者が決まっているのであれば、担当の方に代わってもらうようにしましょう。
シーン3:仕事中、ミスが多発している
発達障害の方のミスを指摘する際は、間違っていることを伝えたうえで、改善策を本人と一緒に考えるようにしましょう。
「こうしてください。」のような一方的に注意にならないように、本人に理由を説明し同意を得ることが大切です。
また、ミスが多発する原因として以下のように色々な要素が考えられます。多面的に原因を探って、一緒に解決するようにしましょう。
<原因の例>
・指示が理解できていない(本人)
・手順や注意すべき点が分からない(本人)
・自分では正確に作業できていると思っている。
・集中力が続かない(本人)
・複数の指示があると混乱する(本人)
・指示命令系統が統一されていない(企業担当者)
・本人が作業できるリズムが整っていない(企業担当者)
・分からないときに質問できる環境をつくれていない(企業担当者)
・雑音が多く、集中できない環境である(環境)
シーン4:休憩中、本人が職場ルールを守れていない場面に遭遇した
発達障害の方は『暗黙のルール』など、明文化されていないことを理解することが苦手なことがあります。悪気はなく、本人は気づいていないだけという場合もあります。注意や叱責、苦情ということではなく、ルールに違反していることや迷惑になりかねないことをきちんと説明した上で、望ましい対応について具体的な提案(イヤホン着用など)を含めて声掛けすると良いでしょう。
6.まとめ
いかがでしたか?
前述でも何度かお伝えしていますが、同じ障害でもその特性は1人ひとり異なります。
発達障害を持つ方と一緒に働く際に、周囲が障害を理解し、必要な配慮をすることで本人の持っている強みを活かして働くことができます。
NHKのページで当事者や周囲の人の体験談を集めたページもあります。
▼困りごとのトリセツ(取扱説明書) http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/
▼職場での困りごと全般 http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/torisetsu/cat_workplace.html
発達障害を持つ方の特性の理解を含め、誰もが働きやすい環境整備に取り組みましょう。
セントスタッフでは色々なスキルを持った障がい者の方も登録いただいております。
お困りのことがございましたらお気軽にご相談ください。
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