『双極性障害(躁うつ病)』とは? ~疾患解説・職場で配慮すべきポイント~
近年、若者や有名人やミュージシャンなどが発症しているとして耳にする機会が増えてきた『双極性障害(躁うつ病)』について、原因や症状をはじめ、企業側が職場で配慮すべきポイントなど、人事採用のご担当者様向けに解説していきます。
⑴『双極性障害(躁うつ病)』とは?
双極性障害(躁うつ病)とは、気分が高まる「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患(こころの病気)です。 近年では、脳の中でも感情のコントロールに関わる部分(前部帯状回)の縮小が確認された例もあり、脳の病気ともいわれています。
一定期間の「躁状態」が続いたのち、「うつ状態」になります。うつ状態だけの「うつ病」とは異なり、双極性障害の場合は「躁状態」から「うつ状態」へ急激に変化します。そのため、落差が大きく、「うつ病」以上に急な精神状態の変化が及ぼすストレスが大きな負担になり、より強くうつ症状を感じることが多くあります。
日本での双極性障害(躁うつ病)の患者の数はは、重症・軽症合わせても0.4~0.7%で、発症率は100人に1人と言われています。
10代後半から20代に多い病気とも言われていますが、実際には中学生から老齢期の方まで幅広い年齢層の患者さんがいます。
治療方法は、<薬物治療>と<心理社会的治療>の2種類があり、薬物治療を中心に治療法を組み立てていきます。
⑵ 双極性障害(躁うつ病)の原因は?
双極性障害(躁うつ病)の原因は明確には明らかになっていません。
セロトニンやノルアドレナリンといった脳内神経伝達物質の機能性欠乏(モノアミン仮説)が発病に関与する、など病因の解明が進んでいます。
また、双極性障害を引き起こす特定の遺伝子はみつかっていませんが、病気になりやすい体質(ストレスに対する敏感さ・弱さなど)には遺伝的な側面や、過労・不眠・喪失体験など生活環境変化が発病の引き金になるとも考えられています。
⑶ 双極性障害(躁うつ病)の症状は?
双極性障害のうち、躁状態とうつ状態を繰り返すものを「Ⅰ型」、軽躁状態とうつ状態を繰り返すものを「Ⅱ型」と分類されています。
症状の程度は人それぞれですが、薬物治療などで回復に向かい、「寛解期(かんかいき)」といわれる症状が安定している人もいます。
*気分が高まる「躁状態」のとき*
・気が大きくなる、自信にあふれる
・徹夜や睡眠時間が少なくても平気になる
・眠らなくても元気に長時間の活動ができる
・アイデアがたくさん生まれる
・よく考えず高額な買い物をしてしまう
・ギャンブルにお金を注ぎ込む
・長時間しゃべり続ける
・注意力散漫になる
・暴言を吐いてしまったり、危険な行動をしてしまう
「躁状態」のとき本人は気分が高まっているため、病気の自覚がなく、本人が気付かないうちに周囲を傷つけてしまうこともあります。
双極性障害は再発しやすい病気でもあるため、こうした躁状態を繰り返すうちに、人間関係のトラブルや家庭崩壊を招いたり、失業、破産などの社会的信用を失うリスクが大きくなるため、周囲のサポートが必要となります。
*気分が落ち込む「うつ状態」のとき*
・気分が落ち込む
・疲れやすい
・起きる気にならず、寝てばかりいる
・やる気がでない
・なかなか眠れない
・何をしても楽しめず、興味が湧かない
・死にたいと思う時がある
うつ状態になるとなにもやる気が起きず、気分が暗くなり仕事に行けないなど、日常生活に支障をきたす場合もあります。
⑷ 安定的に就業をするにはどういう配慮が必要なのか?
双極性障害(躁うつ病)の方には職場の理解と配慮が必要不可欠です。
安定的な就業をするために、企業側の配慮として以下のポイントが挙げられます。
①症状は本人の性格や性質によるものではなく「病気」ということを理解する
まずは極端な「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す双極性障害を正しく理解しましょう。
本人の自覚がないため、周囲の人が今の状態が「躁状態」なのか「うつ状態」なのかを把握できるように理解をすすめる必要があります。
周囲の人を困惑させてしまったとしても、本人を否定したり怒ったりせず、病気と向き合うことで、安定的な就業につながります。
②残業を避ける
双極性障害のある方が「うつ状態」から「躁状態」に転じやすいタイミングとして、繁忙期に遅くまで残業をするなど、過剰に仕事に取り組むときが挙げられます。
「躁状態」の症状の一つに、疲れを感じにくく、自信にあふれていることが挙げられます。
躁状態の時は、無理をしてでも仕事を進めたくなるのです。
しかし、双極性障害のある方は、こうした気分の波をできるだけ減らすことが大切です。
③職場環境の整備
双極性障害の悪化を防ぐためには、できる限り規則正しい生活を心がけることが重要です。
そのため、以下のような業務を与えるなどの配慮が必要となります。
・自分のペースで進められる事務業務
・業務量を自分で調整できる業務
・作業に集中できる業務
・定期的な医療機関の受診が可能な環境
食事や睡眠だけでなく、勤務時間や業務量も一定の量とリズムを保てるような配慮が望ましいです。
まとめ
双極性障害は、気分が高まる「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返すことで仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。
双極性障害をお持ちの方を採用する際は、職場での障害理解が必要不可欠になります。
本人が今「躁状態」なのか「うつ状態」なのか正しく把握し、対応することが必要です。
症状が回復し、安定していれば、幅広い職種・業務で活躍できる方も多く、安定的・長期的に継続した勤務が可能です。
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