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障がい

2021年9月13日

中小企業における障害者雇用 ~現状と課題、企業が押さえておきたいポイント~

障害に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現 の理念の下、国が定めているのが『法定雇用率』です。
※2021年3月31日から障害者の法定雇用率が2.3%へと引き上げられました

全体として実雇用率は年々順調に伸びているものの、特に中小企業の取組みの遅れが見られます。そこで今回は中小企業の障害者雇用における課題や、障害者雇用を進める上で押さえておきたいポイントをご紹介します。

1.『法定雇用率』とは?


法定雇用率とは、一定数以上の労働者を雇用している企業や地方公共団体を対象に、会社全体の常用労働者のうち障害者をどのくらいの割合で雇う必要があるかを定めた基準のことを指します。
この法定雇用率は、障害者の職業の安定を図った「障害者雇用促進法」により定められており、すべての事業主に対してこの割合以上の障害者を雇用するよう義務づけられています。

2021年3月より、民間企業の法定雇用率が2.3%に引き上げられたため、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、 従業員45.5人以上から43.5人以上に変更になりました。


画像引用:厚生労働省リーフレット「令和3年3月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになります」

2.中小企業の障害者雇用の状況


中小企業の障害者雇用の状況はどのようなものなのでしょうか。
厚生労働省が発表している「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」から見ていきましょう。


出典:厚生労働省「令和2年障害者雇用状況の集計結果」を元に筆者作成

上の図から見て分かる通り、雇用障害者数・実雇用率ともに過去最高を更新しているものの、実雇用率は2.15%となっており、当時の法定雇用率2.2%を下回る結果となっています。

また、従業員数300人未満の中小企業の実雇用率が2%を下回っており、大企業に比べると障害者雇用が進んでいないことが明らかです。
※従業員45人以上100人未満の企業は1.74%、従業員数100人以上300人未満の企業では1.99%となっています。

3.障害者雇用においての中小企業の課題とは?


2012年に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が発表した「中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査」によると以下のような結果となっています。


出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査」を元に筆者作成
出典:厚生労働省「第104回労働政策審議会障害者雇用分科会」

「以前に障害者を雇用しなかった理由」の複数回答の結果をみると、「障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった」が最も多く、全体の55.5%を占めていました。次いで、「採用・選考に関するノウハウが乏しかった」(32.7%)、「支援者・指導者の配置等、人的支援の体制の整備が困難だった」3(31.8%)、「障害の状況に応じた労働条件の設定が困難だった」(30.0%)となっています。

「初めて障害者を雇用するに当たって困ったこと」の回答を見ると、「従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善」が52.7%と最も多い結果となっています。次いで、「障害の状況を踏まえた労働条件の設定」(30.9%)、「支援者や指導者の 配置」(28.2%)となっています。

これらの結果から、【障害者雇用全体に関するノウハウの不足】が障害者雇用を進める上での中小企業の課題であることが分かります。

4.障害者雇用を促進するために企業が押さえるべきポイント


では、中小企業で障害者雇用を進めるにはどのようにしたらよいのでしょうか?
必要な対策は企業によって異なりますが、ここでは、中小企業が障害者雇用を促進するために押さえるべきポイントを7つご紹介します。

  • ①障害者雇用に取り組むにあたっての方針を明確化する
  • ②社内の理解を得る
  • ③社内環境の見直し・整備をする
  • ④業務を検討する
  • ⑤入社前に職場実習を利用する
  • ⑥助成金を活用する
  • ⑦定着支援のためのジョブコーチ制度を利用する

①障害者雇用に取り組むにあたっての方針を明確化する

障害者雇用を進めるには、ただ「障害を持っている求職者を採用すれば良い」というわけではありません。まずは、障害者雇用に取り組むに至った理由や意義を整理して、会社の方針として明確化することが必要です。

障害者を雇用することは、障害者雇用促進法に定められた義務(法定雇用率)を果たす以外にも下記のようなメリットがあります。

・企業の社会的責任(CSR)を果たすことで企業価値の創出につながる
・多様性(ダイバーシティ)を重視した企業文化をつくることができる
・社内の業務を見直し、業務効率化、生産性向上を図る

理由は企業によって様々ですが、以下のように会社として取り組む姿勢を社員に周知することで社員や職場の理解を得ることができます。

②社内の理解を得る

①の内容と重複しますが、障害者雇用を進めるには社員や配属先の理解を得ることが必要不可欠です。
障害のある方と一緒に働いたことがない人の中には、障害への理解が出来ていないことによって、「手がかかるのではないか」「うまくコミュニケーションが取れないのではないか」など、ネガティブな印象を持ったりすることもあるでしょう。
このようなネガティブイメージを払拭するためにも、社員が障害者雇用について理解することが重要となります。

③社内環境の見直し・整備をする

障害のある方を雇用する際は、会社規程等を含めた社内環境を整える必要があります。現在の社内の規定や環境を見直し、必要な場合は整備するようにしましょう。

<社内環境の見直し・整備の一例>
・有給休暇、傷病休暇の日数
・フレックスタイム制度、時短勤務制度、在宅勤務制度を導入する
・時間単位の有給休暇
・休職、復職のサポート体制の整備
・メンターやOJTコーチ制度の構築

④業務を検討する

前述にある「中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査」の中で、「以前に障害者を雇用しなかった理由」の1位は「障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった」でした。(55.5%)

しかし、障害の程度は人それぞれで、得意・不得意があります。得意なことを活かして雇用すれば、能力を発揮して活躍することは十分に可能です。
「この仕事は障害者にはできないだろう」と決めつけず、まずは社内の全ての業務を棚卸しして、障害があってもできる業務と業務内容を改善することでできる業務を社内で検討してみましょう。

⑤入社前に職場実習を利用する

企業が初めて障害者を雇用する際には、一定の期間で『職場実習』を実施することもおすすめです。
採用前に実習を行うことで、企業側は障害の特性の理解や、入社後に一緒に働くイメージを持つことができます。
また、以下のことを事前に確認することができ、双方のミスマッチや早期退職を防ぐことが可能になります。

・職場環境や業務に適しているか
・入社後、会社に定着できそうか
・業務に必要な能力やスキルを持っているか

⑥助成金を活用する

企業が障害者の雇用を促進するために助成金制度があります。多くの種類があり、条件も異なりますが、一例をご紹介します。


⑦定着支援のためのジョブコーチ制度を利用する

ジョブコーチとは、障害のある人が自分の特性に合った仕事ができるように就職活動の支援や、職場で障害のある人に付きそって仕事に慣れるための支援をおこなう人のことです。


ジョブコーチ制度の概要や利用方法はこちらの記事からご確認いただけます

このような社外のリソースも活用しながら障害者雇用を進めていくことが重要となります。

5.まとめ


障害者の実雇用率は年々順調に伸びているものの、中小企業での雇用は伸び悩んでいる現状があります。
しかし、障害者雇用は「障害者雇用促進法」に定められた法的な義務だけでなく、企業の社会的責任でもあります。

中小企業は大手企業と比べて、雇用にかけるコストやリソース、ノウハウが限られていることから、雇用への課題がありますが、ご紹介した雇用のポイントをもとに、自社でどのように取り組めるかを考えてみましょう。

相談できる機関や国からの助成金等をうまく活用して障害者雇用を進めることが大切です。

セントスタッフでは色々なスキルを持った障がい者の方も登録いただいております。
お困りのことがございましたらお気軽にご相談ください。



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