法定雇用率と障害者雇用納付金制度
障がい

2020年12月1日

法定雇用率と障害者雇用納付金制度

近年では、ダイバーシティの観点からも、障がい者が活躍できる職場をより増やしていくことが求められ、労働者不足を解決する上でも、障がいを持つ労働者の活躍に期待が高まっています。

そこで、障がい者がいきいきと働きやすい職場を整備するためにも、法整備がされてきました。1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」がもととなり、数多くの改正を経て現在の「障害者雇用促進法」に至っています。

この「障害者雇用促進法」の最大の特徴が、『障害者雇用義務』と『法定雇用率』です。

まず、『障害者雇用義務』としては、雇用する労働者のうちの障がいのある人の割合が一定割合以上になるよう義務づける「障害者雇用率制度」が定められています。
よく耳にする『法定雇用率』とは、制度で定められた「雇用しなければならない障害者数の、従業員における割合」を指しています。

ここからは、『障害者雇用義務』と『法定雇用率』の概要や対象、これからの見通しなどについてお伝えします。

◇概要
民間企業、国、地方公共団体に、組織の構成に応じて一定数の障がい者を雇用する義務を課すものです。2018年に改定された「障害者雇用促進法」によって、民間企業における障害者の法定雇用率は2.2%になりました。

◇法定雇用率
「常時雇用している労働者数」と、雇用しなければならない障害者の割合を示したものを「法定雇用率」と呼びます。
「常時雇用している労働者」とは、期間の定めのある労働者も、事実上1年を超えて雇用されている、あるいは雇用されることが見込まれるものも含まれています。20時間以上30時間未満の労働時間のパートタイマーも短時間労働者として算定基礎に含まれます。

◇法改正経緯
法定雇用率に含まれる障がい種別は、「身体障害者」と「知的障害者」のみでした。それから、2018年の法改正を経て、「精神障害者」の雇用も義務付けられたことで、法定雇用率の対象となる障がいの種類は、「身体障害」「知的障害」「精神障害」の3つに拡大しています。

◇雇用義務を負う事業主
「従業員45.5人以上」の事業主(2.2%現在)
ちなみに、法定雇用率の対象となる障害者は、手帳を所持する身体障害者、知的障害者、精神障害者です。

◇雇用数推移・達成率
法制度改定もあって企業側の理解も浸透してきたため、障がい者雇用者数としては16年連続で過去最高を更新してきています。
しかし、厚生労働省が2019年12月末にリリースした障がい者雇用状況の集計結果によると、法定雇用率を達成出来ている企業は企業全体のうち48%で、およそ半分ぐらいの企業しか達成出来ていない現状です。

◇見通し
法定雇用率は、障害者雇用促進法によって、最低5年に1度は見直されることとなっています。
コロナウイルスによる影響により、採用活動を一時停止している企業もありますが、まずは2021年4月までに、企業の法定雇用率が2.3%へ引き上げられる予定です。その場合の対象は拡大し、「43.5人以上」の事業主に障がい者雇用の義務が生じます。

続いて、法定雇用率を下回った場合は「障害者雇用納付金制度」に基づいた罰則がありますが、制度の目的や仕組み、助成金種類などをお伝えいたします。

◇「障害者雇用納付金制度」の目的
障害者を雇用するためには、施設内のバリアフリー化や設備の改善、重度障害者の雇用管理の職場介助者の配置など、障害者の働きやすさに配慮した環境の最適化が求められます。そのため障害者の雇用に積極的な事業主ほど、さまざまな面で経済的な負担を伴う可能性があります。

そのため法定雇用率を超え、雇用義務を守っている企業と、そうではない企業の間に経済的なアンバランスが生じるので、このような経済的負担の調整を図るために設けられているのが、「障害者雇用納付金制度」です。

◇「障害者雇用納付金制度」の仕組み
「障害者法定雇用率」を達成していない事業主は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に「障害者雇用納付金」を納めることになります。
そして、この徴収された納付金を財源として、「障害者雇用調整金」や「報奨金」、「在宅就業障害者特例調整金」や「在宅就業障害者特定報奨金」、そして、各種助成金の支給がおこなわれています。

◇障害者雇用納付金の徴収額
法定障害者雇用率を達成していない場合の納付金額について、原則的には不足1人あたり月額5万円です。
ただし、障がい者雇用の義務は、従業員が45.5人以上の企業に課されるものですが、納付金の対象となっている企業は、常用労働者が100人超の規模となります。

◇「障害者雇用納付金制度」による助成金の種類
一方、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に徴収された「障害者雇用納付金」は、法定雇用率を達成していたり、助成金が必要だったりする企業に還元されます。
具体的な助成金として、3つ記載します。

1、障害者雇用調整金
常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で、法定雇用率を超えて障がい者
を雇用している場合に支払われる助成金です。法定雇用率を超えて雇用している人数
に応じて、1人につき月額2万7,000円の「障害者雇用調整金」が支給されます。

2、在宅就業障害者特例調整金・ 在宅就業障害者特例報酬金
在宅就業障害者や、または在宅就業支援団体を介して仕事を発注し、支払いをした事業
主に対し、特例調整金、または特例報奨金が支給されます。
在宅就業支援者の支援のためのもので、自社雇用でない発注に対する制度です。
金額などは厚生労働省や行政機関に確認してください。

3、各種助成金
事業主が障害者雇用にあたって、エレベーターなどの設備の整備や、手話通訳・職場
介助者の雇用管理のために必要な介助をつける措置などを行った場合、内容に応じて
助成金が支給されます。

~法定雇用率を下回った場合、納付金を支払えば問題ないのか~
納付金を支払うことは義務ではあり、手続きとしてはそれで終了します。
しかし、不足数が5人以上だったり、3人〜4人の障害者を雇用しなければならない対象事業主が1人も障害者を雇用しなかったりした場合、毎年6月1日の障害者雇用状況報告にもとづいて、ハローワークから「障がい者の雇入れ計画」の作成命令が出されます。
具体的には、2年間で障害者雇用を達成できるように指導されることになります。しかし、それでも改善が見られない場合には、企業名が公表されることになります。

一度公開された情報はこの先ずっとWABに残りますし、そのような悪い印象を与える情報が残っていることで、今後の人材採用や外部との取引きでの悪影響があるかもしれません。

一方、採用計画を達成させることだけを目的に採用を強行したとしても、求職者と職場のマッチングが図れていなかったり、環境整備、教育体制が整っていないと、障がい者雇用での定着は難しいです。

法定雇用率という数字のためだけの障がい者雇用では、うまくいきません。障がい者雇用を進める上でのメリットに意識を向け、1人1人の個性・障がい特性を見極めることが大切です。

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