介護職の賃上げは今後行われる?2022年2月から実施されている賃上げについて解説
2022年2月から、介護職を対象とした賃上げが開始されています。
しかし、本当に給料が上がるのか、自分は対象になるのかなどの疑問や不安を抱いている方もいるでしょう。
この記事では、賃上げの具体的な金額や対象となる人の条件などに加え、介護に携わる人の賃上げに対するリアルな声を紹介しています。
また、介護職における今後の給料の見通しについても解説しますので、ぜひ参考としてご一読ください。
1. 2022年2月から介護職の賃上げが実施されている
岸田政権が行う目玉制作の1つである介護職の賃上げが、2022年2月から開始しています。
介護職の方がどのような恩恵を受けられるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
■賃上げ額は9000円?
今回の介護職に対する賃上げは、1人につき月額9,000円としています。
この9,000円は、現状の給料の約3%に相当する金額で、年収が11万円程度上がる計算です。
しかし、必ずしも給料が9,000円アップするというわけではありません。
というのも、この政策は最低人員配置基準を元に算出することになっているため、基準より職員が多い事業所においては1人当たりの支給金額が少なくなります。
■賃上げの対象は?
今回の賃上げは、「介護職員処遇改善加算のⅠ~Ⅲを算定する事業所」に勤める介護職員が対象です。
正社員に限らず、パートやアルバイトなどの非正規職員も含まれます。
一方、訪問看護や居宅介護支援などは賃上げ事業所の対象にはならないので、給料は上がりません。
■介護職員処遇改善加算の取得状況は?
「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、令和元年における介護職員処遇改善加算の取得状況は以下の通りです。
取得している | 加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅲ) | 加算(Ⅳ) | 加算(Ⅴ) | 取得していない | |
全体 | 93.5% | 75.6% | 10.0% | 7.0% | 0.3% | 0.5% | 6.5% |
介護老人福祉施設 | 99.3% | 90.1% | 6.5% | 2.3% | 0.2% | 0.2% | 0.7% |
介護老人保健施設 | 97.6% | 79.0% | 11.4% | 5.6% | 0.3% | 1.3% | 2.4% |
介護療養型医療施設 | 62.7% | 35.1% | 9.6% | 15.8% | 0.4% | 1.7% | 37.3% |
介護医療院 | 78.5% | 57.2% | 9.1% | 10.8% | 0.5% | 0.9% | 21.5% |
訪問介護 | 92.2% | 70.0% | 12.0% | 9.2% | 0.4% | 0.6% | 7.8% |
通所介護 | 92.3% | 73.1% | 10.9% | 7.4% | 0.4% | 0.6% | 7.7% |
通所リハビリテーション | 81.9% | 64.2% | 9.2% | 7.8% | 0.4% | 0.3% | 18.1% |
特定施設入居者生活介護 | 98.8% | 90.2% | 4.4% | 3.9% | 0.3% | 0.0% | 1.2% |
小規模多機能型居宅介護 | 99.2% | 89.2% | 6.7% | 3.0% | 0.0% | 0.3% | 0.8% |
認知症対応型共同生活介護 | 99.0% | 84.1% | 8.5% | 6.1% | 0.2%/td> | 0.1% | 1.0% |
この表から、90%以上の事業所で介護職員処遇改善加算をしていることがわかります。
つまり、多くの介護職の方が今回の賃上げの恩恵を受けられるというわけです。
■対象外でも賃上げが行われる可能性
今回行われる賃上げは対象事業所の介護職員に限られます。
したがって、同じ事業所の職員であっても看護師やケアマネジャー、事務職などは原則として賃上げの対象外です。
しかし、国から支給される賃上げ報酬の使用目的が処遇改善であれば、使い方は事業所の判断に任されます。
そのため、事業所によっては介護職以外の職種であっても給料が上がる可能性があるというわけです。
ただし、支給する人数が増えれば、当然のことながら1人当たりの支給額は減少します。
■賃上げが行われた理由
今回の賃上げ政策は、介護職だけではなく保育士や看護職員などの職種も対象となる可能性があることは先述しました。いずれの職種も慢性的な人材不足に陥っているという共通点があります。
その背景にあるのが、介護職の賃金水準の低さです。
そのため、賃上げを行うことによって介護職や保育士の人材不足を解消し、優秀な人材を確保し介護職への定着を目指しています。
■賃上げはいつまで行われる?
今回の賃上げは、2022年2~9月までの8か月にわたって行われることが暫定的に決まっています。
しかし、2022年10月以降も今回の賃上げと同程度の水準を維持することが前提となっているため、長期的な賃上げが期待できるでしょう。
2. 介護現場での賃上げに対する声
賃上げという言葉自体には好意的な印象を持つ方も多いかもしれませんが、今回の賃上げについて介護の現場で働く人はどのように感じているのでしょうか。
■好意的な声
好意的な意見は以下の通りです。
● たとえ9,000円という少額であっても、賃上げが行われたことは大きな進展なのでよかったと思う
● 今回の賃上げをきっかけに、今後も賃上げすることを期待したい
● 9,000円の賃上げが現実になれば嬉しいが、それより少額であっても給料が上がることは素直に嬉しい
■否定的な声
否定的な意見は以下の通りです。
● 処遇改善と言われているが、本当に給料に反映されたことを確認するまで不安だ
● 賃上げ自体は嬉しいことだが、9,000円という金額は激務の対価に釣り合わないため、期待を上回るものではなかった
● 人員不足などを解消するためには、賃上げよりも前に職場環境を改善することが大切だ
● 賃上げよりも介護職の負担を減らすための人員配置の緩和策を優先するべきだ
3. 介護職員処遇改善加算について
今回の賃上げだけでなく、介護職員の処遇を改善するための制度は複数あります。
その代表が介護職員処遇改善加算です。
■介護職員処遇改善加算とは?
2012年からスタートした介護職員処遇改善加算は、職員の賃金や職場環境の改善に取り組む事業所に対して介護報酬を上乗せ支給する制度です。
上乗せされた介護報酬は介護職員に配分されるため、給料アップにつながります。
■加算のレベルはⅠ~Ⅲに分かれる
介護職員処遇改善加算は、事業所が取り組んでいる処遇改善項目の数や内容に応じてⅠ~Ⅲの加算レベルがあります。
レベルⅠは最も難易度が高く、取得が難しいでしょう。
加算Ⅰ~Ⅲのレベルそれぞれの支給金額は以下の通りです。
● 加算Ⅰ:介護職員1人につき月額37,000円相当
● 加算Ⅱ:介護職員1人につき月額25,000円相当
● 加算Ⅲ:介護職員1人につき月額15,000円相当
■特定処遇改善加算について
介護職員処遇改善加算と似ている制度に「特定処遇改善加算」という制度があります。
これは介護職全体を対象としたものではなく、勤続年数が長く、経験や技術に優れた介護職員の給料を上げることを目的とした制度です。
従来の「介護職は給料が上がらない」というイメージを払拭し、長く働ける給与体系を築くことで離職を防ぐことを狙いとしています。
2020年に行われた調査では、介護職員処遇改善加算(I~Ⅲ)を取得している事業所のうち、およそ63.3%が特定処遇改善加算も取得していることもわかっており、処遇改善の進み具合が伺えるでしょう。
4. 介護職の給料は今後改定される?
介護職の給料を継続して上げるためには、国が定める介護報酬の見直しが不可欠です。
そこで、介護職員については介護報酬の改定を行い、2022年10月以降も継続して介護報酬加算措置を講じるという政府の考えが示されています。
そのため、今後も介護職の処遇は改善が継続される予定であり、着実な給料アップが期待できるでしょう。
5. まとめ
2022年2月にスタートした賃上げを始め、介護職員処遇改善加算などによって介護職員の給料の見直しや底上げが現実のものとなっています。
今後も徐々にではありますが、介護職員の給料は上がっていくでしょう。
給料は働くうえで大切なモチベーションです。
介護職だから給料が低くても仕方ないとあきらめる必要はありません。
自分の仕事に自信を持ち、満足できる働き方を手に入れましょう。
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