【5歳児の発達障害チェックリスト】5歳頃に見られる傾向と保育士から保護者への伝え方
5歳児を担当する保育士の中には、発達障害の兆候や特徴を知りたいと思っている方も多いのではないでしょうか?この記事では、ASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)のチェックリストを紹介します。
これらのチェックリストを活用することで、子どもの行動や特性を客観的に評価できるでしょう。また後半では、発達障害が疑われる場合の保護者への伝え方についても取り上げていますので、ぜひ最後までご一読ください。
1. 発達障害とは
発達障害とは、生まれつき脳の機能に偏りがあるさまざまな障害の総称のこと。社会生活や人間関係で困難を抱えることが多い一方、ときには特定の優れた能力や才能を発揮することがあるため、周囲には理解されにくい側面もあります。
しかし発達障害には、特性に応じた適切な支援が必要なうえ、理解ある環境や柔軟なアプローチ・サポートが重要です。脳の認知機能に関連した障害であることは確認されているものの、原因やメカニズムはまだ完全に解明されていないため、具体的な手順や方法には明確な答えが存在しません。個々のニーズや個性を尊重し、成長できるような環境を作り上げることが求められます。
2. 発達障害の種類と特徴
発達障害は、大きく以下の3つの種類に分類されます。発達障害の種類と主な特徴を見てみましょう。
■ASD(自閉症スペクトラム障害)
ASDは、自閉症やアスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害のグループをまとめた新たな診断名です。コミュニケーション能力、社会性、想像力に障害が出やすく、感覚過敏または感覚鈍麻(どんま)などの特異な感覚処理が見られることもあります。
■ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHDは、その子どもの年齢に見合わない注意力の散漫や多動性、衝動性が主な特徴。症状の表れ方は個人によって異なりますが、落ち着きのない様子が共通して見られます。
■LD(学習障害)
LDは、全般的な知的発達に遅れがないものの、読む、書く、計算、推論する能力のうち、特定のものを学んだり行なったりするのが著しく、困難な状態を指します。
無料会員登録はこちら3. 5歳頃に見られる発達障害の傾向チェックリスト
以下は5歳児のどこに着目したらよいのかをまとめた、チェックリストです。なお、子どもの発達には個人差があり、チェックリストの項目が多く当てはまっていても、それだけで発達障害を断定はできません。最終的には、専門医の診断が必要です。
■ASDチェックリスト
ASDの特徴は大別すると、「コミュニケーション」と「感覚過敏」です。感覚過敏については、2歳までに把握できることが多いため、5歳頃はコミュニケーションに注目しましょう。
5歳児に見られるASDの特徴は、次の通りです。
- 1人で遊ぶことが多い
- 冗談が通じない
- あいまいな表現が理解できない
- 空気を読むのが苦手
- 行事に参加することが困難
- 他人への関心が薄い
- 勝ち負けや順位、独自ルールへのこだわりが強い
- 言われた言葉をオウム返しする
幼い子どもは、誰かの気を惹きたいときも上記と同じような行動をとることがあります。そのため、ASDの特徴が自宅と園など複数の状況下で繰り返し見受けられるかを、重要視しましょう。
■ADHDチェックリスト
5歳頃はADHDの特性が表れやすく、周囲の人も気付きやすくなる年齢だと言われています。
5歳児に見られるADHAの特徴は、次の通りです。
- じっとしていられない(すぐにウロウロしてしまう)
- 集団生活にうまく適応できない
- 少し前に言ったことを完全に忘れてしまう
- ものをなくしたり約束を忘れたりすることが多い
- 気が散りやすく、食事中に突然歩き出すことがある
- 友達と間でトラブルになる行動が多く見られる
- 他の子どもより騒ぐ、叫ぶなどの行動が明らかに多い
- 自分の思い通りにならないと、激しく癇癪(かんしゃく)や乱暴な行動を起こす
またこれらの特徴が国際基準に設けられている4つの条件を、すべて満たしているかが重要な判断材料となっています。
「国際基準に設けられている4つの条件」
- しばしば6カ月以上認められる
- 患児の発達水準から予測されるよりも著しい
- 少なくとも2つ以上の状況(例,家庭および学校)でみられる
- 家庭,学校,または職場での機能を妨げている
■5歳頃はLDに気付きにくい
5歳という就学前の段階で、LDを特定するのは難しいでしょう。ただし、以下のような特徴が見られる場合、後になってLDと診断されるケースが見受けられます。
- 言葉の発達が遅い
- 言葉の使用が偏っている
- 工作用の道具をうまく使えない
- スキップができない
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4. チェックリストで気になる項目が多かったら…
チェックリストで気になる項目が多いケースも珍しくありません。保護者への伝え方や実践の取り入れ方、相談できる場所を確認しておきましょう。
■保護者にどう伝える?「5歳児の発達障害の可能性」
「5歳児の発達障害の可能性」を保護者に伝える際は、トラブルを防ぐために、憶測ではなく具体的な事例や園での様子を伝えることが大事です。
園での生活で気になる点や、保育士が実際に取り組んでいる対処法をありのまま伝えましょう。また、子どもが生活しやすい環境を作るために保護者と連携し、共同で対応する姿勢を示すことも大切です。
■家庭での取り組みを園でも実践すべき?
家庭での取り組みや保護者の考えをヒアリングした後、園でも実践できるかどうかを検討します。家庭と園では環境が異なるため、可能な範囲で取り入れるとよいでしょう。
保護者との協力体制を築きつつ、園の環境や保育プログラムに合わせて適切な取り組みを行いましょう。
■発達障害について相談できる施設
発達障害について相談できる施設は、以下のようなものがあります。
<療育センター>
医師がいる場合が多く、治療教育(療育)を行う施設です。
<保健センターや保健所>
心身の健康全般に対応する施設。医師や保健師が在籍し、発達障害に関する相談や情報提供も行なっています。
<児童相談所>
子どもの悩み全般に対応する機関で、発達障害に関する相談も受け付けています。
<市町村の担当窓口>
発達障害に特化した窓口を設けている地域もありますが、一般的には子育てや福祉、地域医療などを受け付けています。
5. まとめ
今回は、5歳児における発達障害のチェックリストを中心に紹介しました。発達障害は個別に特性があり、チェックリストだけで判断することは難しいですが、子どもの行動や特性を客観的に把握するのに役立ちます。チェックリストを活用し、保護者と協力体制を築きながら、子どもたちの成長をサポートしていきましょう。