相談支援専門員とは? 必要な資格や仕事内容、給料を解説!
相談支援専門員は、障害者支援業務の中でも、比較的新しい職業であるといえます。そのため、研修内容が自治体によって若干異なることが問題視され、研修内容の統一化が行われたことで注目されました。
しかし、資格に興味を持っていても、具体的な仕事内容、資格の取得方法、役割、目的などについて詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
相談支援専門員は、障害を持った利用者と家族をサポートする役割があります。
本記事では、サポートが必要な人に対し、どのように支援をするのか、相談支援専門員の役割や具体的な仕事方法について紹介します。
1. 相談支援専門員とは
相談支援専門員は、障害のある人がサービスを活用できるように支援する仕事です。障害者福祉支援や、生活、住居など暮らしにおける悩みの相談支援を行い、障害を持つ人と家族を支えています。
相談支援専門員として働くためには、特定の研修を受けなければなりません。研修を受講する際には、業務経験も必要であり、持っている資格や業務内容ごとに研修期間の違いがあります。また、相談支援専門員の資格は、一度取得すれば良いということではなく、更新が必要であり、更新するためには研修を受けなければなりません。相談支援専門員の資格を取るための研修は、各自治体で行われています。
無料会員登録はこちら2. 相談支援専門員の仕事内容
相談支援専門員の仕事内容は、「基本相談支援」「地域相談支援」「計画相談支援」「障害児相談支援」の4つに分かれており、それぞれの役割や目的には違いがあります。以下、それぞれの仕事内容について詳しく紹介します。
■基本相談支援
「基本相談支援」は、相談支援全体のベースであり、「地域相談支援」「計画相談支援」「障害児相談支援」をつなぐといった目的があります。障害のある人や家族が生活する中で悩んでいることや困っていることをヒアリングし、福祉サービスの情報、支援内容、他の機関との連携に関して情報を提供します。
■地域相談支援
「地域相談支援」は、基本相談支援で障害者の福祉サービスの利用を希望する人がいた場合、申請書類を作る仕事です。住んでいる自治体からサービス提供を決定する旨の連絡があった際には、障害者福祉事業やその他のさまざまな機関への連絡、調整、連携を行い、サービスの利用を始めます。定期的に確認を実施した上で、支給の更新やサービス内容を見直し、変更があった際にはミーティングを開くこともあります。また、地域相談支援は、「地域移行相談支援」と「地域定着相談支援」に分けられることが特徴です。
「地域移行相談支援」とは、障害者の入所する施設で生活を送っている人が退所した後、どのように生活をするについての相談を受け、退所後の生活に必要な手続きやサービスの利用、生活の準備をサポートすることが一般的です。
「地域定着支援」とは、障害者だけで暮らしている世帯や一人暮らしの人が施設に入所した後の生活の悩みや不安について相談を受ける仕事です。生活する中で困っていることに対してのアドバイスや支援を行い、安心して生活できるようにサポートします。さらに、施設を退所した後も、同じ地域で生活できるように支援することも仕事内容の一つです。
■計画相談支援
「計画相談支援」は、サービスの調整をする仕事です。障害のある人に対して、自治体から指定された事業者が障害福祉サービスの利用開始までをサポートする「サービス利用支援」と、既に提供されているサービスの見直しを図る「継続サービス利用支援」に分けられます。継続サービス利用支援は、サービスを提供された後に問題がないかどうか、2カ月に1回、モニタリングを行います。さらに、障害のある人や家族の生活における悩み、不安の相談に乗るといった役割もあります。
■障害児相談支援
障害児相談支援は、障害児や家族が通所サービスの利用を希望する際、障害児支援利用計画書を作る仕事です。また、通所サービスの利用を始めた後、定期的に「継続障害児支援利用援助」を実施し、支援を行います。
3. 相談支援専門員の役割とは
相談支援専門員は、身体や心に障害のある人が生活を安定させ、自立して日常生活を送るための支援をする役割があります。「基幹相談支援センター」と呼ばれる施設では、相談支援専門員を配置しなければならず、障害児支援の仕事の中でも、非常に大切な役割があるといえるでしょう。
さらに、政府が地域の支援事業に注力していることからも、相談支援専門員の需要は高くなっていることが分かります。また、障害児支援のプロであり、障害のある人や家族が福祉サービスを利用する際の相談窓口でもあります。非常に責任の重い業務ですが、障害のある人や家族との信頼関係を築き、支援できるといった点でも重要な役割があるといえるでしょう。
4. 相談支援専門員になるには? 無資格でも働ける?
実際に働くためには、実務経験が必要な上、特定の研修を受講しなければなりません。また、資格を更新しなければならず、保持し続けるためには、5年に1回、研修を受けることも特徴です。実務経験があることと特定の研修を修了したことを証明できれば、資格を取得することができます。以下、相談支援専門員になる方法や、必要な実務経験などについて、詳しく紹介します。
■資格取得に必要な実務経験
資格を取得するためには、実務経験が必要です。仕事内容ごとに求められる実務経験が異なるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。
・相談支援業務の場合
相談支援業務に必要な実務経験は、以下の通りです。 業務内容 |
実務経験年数 |
● 施設等において相談支援業務に従事する者 ● 医療機関において相談支援業務に従事する者で、次のいずれかに該当する者 1. 社会福祉主事任用資格を有する者 2. 訪問介護員2級以上に相当する研修を修了した者 3. 国家資格等を有する者 4. 施設等における相談支援業務に従事した期間が1年以上である者 ● 就労支援に関する相談支援業務に従事する者 ● 特別支援教育における進路相談・教育相談の業務に従事する者 ● その他、これらの業務に準ずると都道府県知事が認めた業務に従事する者 |
5年以上 |
・直接支援業務の場合
直接支援業務の場合は、以下の実務経験が必要です。 業務内容 |
実務経験年数 |
● 施設および医療機関等において介護業務に従事する者 ● その他これらの業務に準ずると都道府県知事が認めた業務に従事する者 |
10年以上 |
・有資格者の場合
有資格者の場合は、必要な実務経験年数が3年以上、5年以上に分かれています。 業務内容 |
実務経験年数 |
● 施設および医療機関等において介護業務に従事する者 ● その他これらの業務に準ずると都道府県知事が認めた業務に従事する者 ● 上記の業務に従事する者で、次のいずれかに該当する者 1. 社会福祉主事任用資格を有する者 2. 訪問介護員2級以上に相当する研修を修了した者 3. 保育士 4. 児童福祉員任用資格者 5. 精神障害社会復帰指導員任用資格者 |
5年以上 |
● 相談支援業務、直接支援業務に従事する者で、国家資格等による業務に5年以上従事する者 |
3年以上 |
■相談支援従事者初任者研修
資格を取るための相談支援従事者初任者研修は、各自治体で実施されており、自治体ごとにスケジュールが異なります。初任者研修の実習では、地域と連携することを目的としており、相談支援を選定して実施されます。主な研修の流れは、以下の通りです。
● 1~2日目:講義(基礎的な理論、ミッションを理解する)
● 3~4日目:演習(プロセスを体験)
● 約1カ月:地域で相談支援を実施
● 5日目:演習(プロセスを体験)
● 約1カ月:地域で相談支援を実施
● 6~7日目:演習(実践研究)
相談支援の実施では、講義と講習の内容を確認し、利用計画案を作ったり、基幹相談支援センターや事業所でアドバイスをもらいながら、相談支援を行ったりします。
■相談支援従事者現任者研修
更新の際に受ける相談支援従事者現任者研修は、各自治体で実施されており、自治体ごとにスケジュールが異なります。現任者研修の実習では、受講者が対応している相談支援事例を一つ選んで行います。主な研修の流れは、以下の通りです。
● 1日目:講義(地域を基盤とするソーシャルワーク理論を確認する、スーパービジョンの理論と方法を理解する)
● 2日目:演習(自分の業務を振り返る、スーパービジョンの必要性を体感する)
● 約1カ月:実習
● 3~4日目:演習
複数人でスーパービジョンを行い、自分の相談支援の内容が正しかったかどうかについてチェックし、次に支援機関からスーパービジョンを受け、研修で学習したことを実践します。なお、5年に1度、研修を受講しないと資格を失うため、注意が必要です。
5. 相談支援専門員の働く場所・就職先
相談支援専門員は、どのような場所で働くことが多いのか、資格を取得した後の働き方について知りたいという人も多いでしょう。資格取得後に就職する場所は、主に「相談支援事業所」と「基幹相談支援センター」といった2つの事業所が挙げられます。それぞれの特徴や業務内容を見ていきましょう。
■相談支援事業所
「相談支援事業所」は、地域の相談支援を行う場所です。「一般相談支援事業所」「特定相談支援事業所」「障害児相談支援事業所」に分かれており、それぞれ支援内容が異なります。
● 一般相談支援事業所:基本相談支援・地域相談支援・地域移行支援・地域定義支援
● 特定相談支援事業所:基本相談支援・計画相談支援・サービス利用支援・継続サービス利用支援
● 障害児相談支援事業所:障害児支援利用援助・継続障害児支援利用援助
■基幹相談支援センター
「基幹相談支援センター」は、地域における相談支援業務の中心となり、支援総合業務を行います。障害の程度や性別を問わず、情報提供やアドバイスを行うため、「どの機関に相談すれば良いのか判断できない」といった相談内容が寄せられることもあります。また、基幹相談支援センターは、相談内容ごとに事業所を紹介するだけではなく、事業所から対応の難しい事例を依頼されるケースも珍しくありません。さらに、相談支援だけではなく、支援するための人材教育を実施したり、障害者の権利を守ったり、虐待を予防したりといった仕事も行います。
6. 相談支援専門員の給料事情
相談支援専門員の給料は、常勤、非常勤で異なります。それぞれの給料については、以下の通りです。
常勤 |
非常勤 |
24万8,040円 |
18万7,611円 |
相談支援専門員は、需要の高い仕事であり、他の福祉に関わる仕事と比較すると、給料は高いです。さらに、勤務する施設によっては、資格手当をもらえるケースもあります。なお、障害のある人や家族と長期間関わる仕事であるため、フルタイムで働くことが求められており、雇用形態は常勤(正社員)が多いです。
7. 相談支援専門員の魅力・やりがい
相談支援専門員は、障害のある人や家族が「このような状況では無理」「どうしようもない」と諦めているときに励まし、目標に向かってサポートを行います。全て希望通りになるというわけではありませんが、少しでも状況が良くなったり、相談者の気持ちが前向きになったり、変化があった際にはやりがいを感じられるでしょう。また、相談支援の大切さも実感することができ、やりがいやモチベーションアップにもつながります。
8. 相談支援専門員に向いている人
相談支援専門員に向いている人には、いくつかの特徴があります。自分に当てはまる特徴があるかどうか、身に付けられるスキルがあるかどうかについて、確認してみましょう。
■コミュニケーションが得意な人
相談支援専門員は、他人からの相談を親身になって聞かなければならない仕事です。障害のある人や家族の状況について把握し、心の中をくみ取りながら適切な支援を行うことが求められるため、コミュニケーションが得意な人に向いています。さらに、多くの人の相談に乗る必要があり、どんな人とも円滑にコミュニケーションを取らなければなりません。コミュニケーションを取るためには、元々の対人スキルだけではなく、障害者に対するサービスや雇用など、変化し続ける情報をキャッチし、勉強する向上心も必要です。
■共感能力の高い人
共感能力は、他人の意見、考え方、感情に共感する能力のことです。障害のある人や家族との信頼関係を築き、必要なコミュニケーションを取るためにも、大切な能力であるといえるでしょう。また、利用者の成長や変化を一緒に喜ぶためにも重要な能力です。
共感能力のある人は、普段から周囲の人に対して関心があり、観察力も高いことが特徴です。会話をする中でも、相手の発した言葉をそのままの意味で捉えず、「なぜそのようなことを言うのか」「どのような状態だったのか」などといったことを考えながら会話をします。さらに、話を聞くのが上手で、相手の言いたいことをしっかり聞き取ることも特徴です。
なお、共感能力は、高めていくことも可能です。例えば、相手が話している内容の展開が分かった時点で、先回りをしたり、話を遮ったりせず、相手の話したい内容が最後まで見えたとしても、しっかり聞くことを意識しましょう。
9. 相談支援専門員の将来性・キャリアアップ
相談支援専門員は、さまざまな機関や事業者とともに、利用者を支援するためのサポートを行う仕事であるため、現場で仕事するだけではなく、マネジメントスキルも身に付けることができます。また、悩みや不安を聞いた上で、正しい支援ができるように手配を行い、支援を継続するための業務も行います。相談支援専門員として働く中で行う業務は、スキルアップはもちろん、福祉業界以外の業界においても生かすことができるでしょう。
キャリアアップのための一つとしては、地域の中核でもある「主任相談支援員」になる方法が挙げられます。主任相談支援員は、ソーシャルワークの技術が高く、地域や他の相談支援専門員への指導を行う役割もあります。職場問わず、相談業務のマネジメントを行う重要な仕事です。
10. 相談支援専門員を目指そう
相談支援専門員として働くためには、「実務経験+指定の研修」を受け、資格取得後も更新のための研修を受ける必要があります。研修は「7日間(合計42.5時間)+およそ2カ月間の実習」を行いますが、研修内容は自治体によって若干異なることが特徴です。
研修のスケジュールについては、都道府県のウェブサイトをチェックしましょう。
相談支援専門員の資格を更新する際の研修も各自治体で行われており、開催時期は自治体ごとに異なります。更新のための研修は「4日間(合計24時間)+およそ1カ月間の実習」を行います。
主な就職先としては、相談支援事業所と基幹相談支援センターの2つが挙げられますが、実際の業務は細分化されており、それぞれの仕事内容、役割、目的に違いがあります。
相談支援専門員の資格や仕事内容について理解した上で、資格の取得やキャリアアップを目指しましょう。