福祉用具専門相談員とは?仕事内容や必要な資格、講習内容も解説!
福祉用具は介助が必要な方にとって自立や日常生活を助ける便利なものです。高齢化が進む現代において、福祉用具の需要はますます高まっています。
また、近年の福祉用具は取扱方法が複雑なものが多く、素人の方が安易に使えるものは多くはありません。
そんな福祉用具の最良な選び方や正しい使い方について、詳しい専門家である福祉用具専門相談員という仕事も求められています。
福祉用具専門相談員は、介護業界において福祉用具のエキスパート的存在で、その豊富な知識から介護が必要な方、または障がい者の自立を福祉用具を通してサポートする仕事です。
今回は、福祉用具専門相談員について詳しく解説していきます。
1. 福祉用具専門相談員とは
福祉用具専門相談員とは、介護を必要とする方や障がいをもった方が日常生活を送る上で、必要となる福祉用具の選び方や使い方を指導するアドバイザーのことです。
年々福祉用具の種類が増えたり、最新技術が導入されたりなど、福祉用具に対する知識が求められており、このような専門家の存在は必要不可欠です。
また、介護保険制度において、福祉用具の販売・レンタル事業を行う事業所には最低2名以上配置するように義務化されています。
なお近年、福祉用具専門相談員の活躍の機会は、事業所だけに留まらず、福祉用具メーカーやドラッグストアなど、さまざまな場所に広がっており、福祉業界で注目を集めている職業です。
資格取得には、厚生労働省が指定する講習を受講することで取得可能で、公的資格ではありますが国家資格ではないため、取得のハードルは高くありません。
2. 福祉用具専門相談員の仕事内容
福祉用具専門相談員の仕事は、介助を必要とする方やその介助者に対して、福祉用具の選定や取扱方法などの相談を受けることです。
具体的な仕事内容は、ケアマネージャーと協力して利用者が快適な生活を送るうえで、最適な福祉用具を提案してケアプランに落とし込み、実際の利用方法や調整方法などを指導します。
また、障がいをもった方の自立を促すために福祉用具を提案することもあります。さらに、定期的なモニタリングを行い、利用者が福祉用具を適切に使えているかなどを確認します。
それぞれの仕事内容について詳しく説明します。
■用具の選び方相談
利用者の体調や環境を考慮して、最適な福祉用具を提案します。
また、厚生労働省が2018年10月に福祉用具の貸与額に上限を設定したことにより、福祉用具を提供する事業者は利用者に対して、当事業者の貸与価格・全国平均貸与価格と両方の説明義務が課せられています。
■用具の利用計画作成
福祉用具の利用計画は、ケアマネージャーが作成したケアプランと利用者およびその家族の相談内容をもとに立てられます。
その際は、福祉用具を使用することで今後の生活をどう改善していくのかが重要となり、利用者の希望をもとに福祉用具の選択を行います。
こうして作成された「福祉用具サービス計画書」に利用者が同意することで、福祉用具のレンタルが可能となります。
■用具の取り扱い説明・調整
実際に貸与された福祉用具を利用者に合わせて調整します。
加えて福祉用具を安全に正しく利用できるように、十分な取扱説明も行います。「福祉用具サービス計画書」に基づき、その他の選定利用や故障時の対処法なども説明する義務があります。
■モニタリング
福祉用具専門相談員は、貸与した福祉用具の利用者の自宅に定期的に訪問して、その後の経過を確認します。
福祉用具の点検なども行い、劣化による事故などが起きないように注意します。
なお、このモニタリングは年に2回行う必要があり、これは介護保険法により義務付けられています。
3. 福祉用具専門相談員になるには
福祉用具専門相談員は、だれでもできる業務ではなく、資格を有している方のみができる仕事です。
一部の福祉系国家資格者は、福祉用具専門相談員指定講習を免除されており、福祉用具専門相談員と同等の業務が可能です。
福祉用具専門相談員になれる資格や資格の取得方法を説明します。
■福祉用具専門相談員の資格を取得する
福祉用具専門相談員として業務を遂行するには、福祉用具専門相談員の資格を所有している必要があります。その資格取得には、まず各都道府県知事指定の「福祉用具専門相談員指定講習」の受講が必要です。
その講習を受講し、修了評価試験に合格すると福祉用具専門相談員として働くことができます。
ここでは、福祉用具専門相談員になるための受験資格やかかる費用、講習の内容などについて詳しく解説します。
・受験資格
福祉用具専門相談員資格の取得、講座の受講に資格はありません。
各都道府県知事から指定された研修機関において、誰でも指定講習が受けられます。
そのため、これから介護関連に就業したい方や福祉用具販売に携わりたい方などにおすすめです。
・受験費用
指定講習にかかる費用は4~6万円で、受講する都道府県によって前後します。
詳しくはお住まいの都道府県で検索してみましょう。
・講習の内容
講習内容はおもに以下です。
- 福祉用具の役割
- 介護保険制度について
- 高齢者の介護・医療について
- 福祉用具の知識・技術
- 福祉用具のサービス・利用支援について
- 福祉用具に関する総合演習
これらを約1週間、計50時間受講します。
・福祉用具に関する知識があるとみなされる国家資格を取得する
例外として以下の福祉系国家資格者は、上述の指定講習を受講しなくても福祉用具に関する知識があると見なされ、福祉用具専門相談員と同等の業務が可能です。
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 保健師
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 義肢装具士
また、2015年3月31日以前まではホームヘルパー1~2級や介護職員基礎研修、初任者研修の資格を有している方も福祉用具専門相談員と同等の業務が可能でした。しかし、2015年4月1日以降はその資格が失効したため、福祉用具専門相談員の資格取得が必要です。
4. 福祉用具専門相談員の主な職場
福祉用具専門相談員は、主に福祉用具の販売や貸与を行っている事業所で就業することが多くあります。
これは、介護保険法によって福祉用具の販売・貸与を行う事業所には福祉用具専門相談員を2名以上配置しなければならないという義務があるためです。
しかし、福祉用具専門相談員の活躍の場はそれだけに留まらず、以下のような就業先もあります。
- 訪問介護事業所
- 福祉用具メーカー
- ドラッグストア
- 生活用品販売店
スーパーやドラッグストアなどでは、自宅介護のニーズに応えるために介護・福祉用具コーナーの拡張をおこなっている店舗が増えています。また、住宅リフォームや改修工事に関わる工務店や住宅メーカーにおいても、その活躍の場が広がっており、要介護者が過ごしやすいよう手すりを設置したり、段差を無くしたバリアフリー化をしたり、福祉の観点からアドバイスを行います。
無料会員登録はこちら5. 福祉用具専門相談員の給料
福祉用具専門相談員の平均月収は約33万円(令和2年2月現在)です。
国が介護職の給与増化を図った結果、2年前と比較すると約2万円弱の増額となっています。
さらなる給与アップを目指すのであれば、より専門的に福祉分野に関われるケアマネージャーや福祉の観点から建築分野に関われる住環境コーディネーターといった資格取得で、業務の幅を広げることが可能です。
ほかにも公益財団法人テクノエイド協会認定の「福祉用具プランナー」、日本福祉用具共有協会認定の「福祉用具選定士」など、福祉用具専門相談員の活躍の幅を広げられる資格取得もあります。
6. 福祉用具専門相談員に向いている人
福祉用具専門相談員は、福祉用具を通して介護を必要とする利用者の生活を支えるのが仕事です。
福祉用具専門相談員にどのような人が向いているのか説明します。
■コミュニケーションが得意な人
福祉用具専門相談員の仕事では、利用者やその家族、ケアマネージャーなどと密なコミュニケーションをとる必要があります。
福祉用具を提供する上で、さまざまな方面で連携できていないと致命的な問題になり得ます。
また、利用者が福祉用具を正しく安全に利用するためには、やりとりなどもしっかりと行わなければいけません。
そのため、コミュニケーションが得意な人は、福祉用具専門相談員が向いています。
■些細な変化に気がける観察力がある人
福祉用具専門相談員は、福祉用具の提案をして実際に利用者に使ってもらって終わりではありません。
提供した福祉用具について、年2回のモニタリングが義務付けられており、その後の利用者の経過を観察して、体調の変化などに対して敏感に察知する力が求められます。
導入した福祉用具は正しく使用しているか、また福祉用具に劣化はないかなど、細かな部分に気付く能力が必須です。
■思いやりのある人
人と関わる仕事のため、人を思いやる心はとても大切です。
また、介護する側の気持ちや介護される側の気持ち、その両面をしっかりと理解している方でなければ利用者にとって最善のサービスを提供することは難しいです。
そのため、思いやりを持って接することができる人には向いています。
7. 福祉用具専門相談員を目指そう
福祉用具専門相談員は、高齢者や障がい者のために必要不可欠な仕事です。
福祉用具を通して介護業界に携わることができ、人と関わることができるため、おすすめな職種です。
資格取得のハードルも低く、福祉用具専門相談員指定講習を受講すれば、資格を取得できるという魅力もあります。また、就業先によっては、他の資格との併用で業務の幅が増え、給与アップも望める点も魅力です。
介護業界で働く上で、福祉用具の知識はあって損することはありません。ぜひ資格取得を目指してみましょう。
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