4歳児の発達障害チェックリストとは?早期発見の重要性や発見後の対応方法も解説!
4歳になると自分でできることが増え、保育園や幼稚園では、お姉さん・お兄さんとしての在り方を求められます。しかし、そうした集団生活の場面でコミュニケーションが困難だったり、ひどい癇癪(かんしゃく)を起こしてしまったりということがあると、「もしかして発達障害?」と考える方も多いのではないでしょうか?
本記事では、4歳児に見られる発達障害の特徴について解説します。発達障害のチェックリストや早期発見の重要性、発見後の対応方法も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
1. 発達障害ってなに?
発達障害とは、先天的に脳機能の発達に偏りがあり、周辺環境や人間関係の不一致から社会生活に困難が生じる障害のことです。
また、発達障害者支援法では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
■発達障害の原因は?
発達障害の原因やメカニズムははっきりとわかっていません。いずれも脳の先天的な働きによるものという点で共通していますが、症状には個人差があるほか、環境によっても表れ方が変化します。
また、最近ではその子どもが置かれている養育環境や栄養状態、薬物、生活習慣も関連するのではないかとみられています。
■早期発見にメリットはあるの?
早いうちから子どもの特性に気付くことで、症状の改善や困難を軽減できる可能性があります。ただし、発達障害を外見で判断することは難しく、課題や困りごとは人によってさまざまです。
そのため、発達障害に気付かず過ごしていると、「わがまま」「問題児」などと判断され、周りと同じようにできなかったり大人に怒られたりするたびに、自己肯定感を下げてしまいかねません。
子どもの発達障害で大切なのは、周囲が障害の特性を理解して、適切な環境と学びの機会を用意し、子どもたちが生きやすいよう支援を行なっていくことです。
2. 発達障害の種類と特徴
発達障害は大きく3種類に分けられます。それぞれの特徴を把握し、発達障害の理解を深めましょう。
■自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、自閉症をはじめ、アスペルガー症候群や広汎性発達障害などの総称です。社会生活におけるつまずきや困りごとが多く、コミュニケーションや人間関係の構築が難しい傾向にあります。
<主な特徴>- 社会的コミュニケーションや対人関係をうまく築けない
- 限定的な行動や反復行動など、特定の物事への興味・こだわりが強い
- 感覚刺激に過敏または鈍い
- 手先が不器用
■ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
主な特性として、「不注意」「多動性」「衝動性」が挙げられ、人によっては2つ以上の特性が混合することもあります。自分の意識や行動をコントロールすることが苦手です。
<主な特徴>
【不注意】忘れたり失くしたりすることが多い、集中力がなく飽きやすい
【多動性】じっとしていることが苦手、落ち着きがない
【衝動性】考えるよりも先に行動してしまう、場の空気が読めない
■学習障害(LD)
学習障害(LD)は、知的発達に遅れはみられないものの、聞く、話す、読む、書く、計算・推論する能力のいずれかについて、習得・使用が著しく困難な状態を指す障害です。限局性学習症とも呼ばれ、困難さを示す能力によって、読字障害(ディスクレシア)・書字表出障害(ディスグラフィア)・算数障害(ディスカリキュア)の3つに分類されます。
<主な特徴>
【読字障害】文字や文章を読むことが困難
【書字表出障害】字を書くことが困難
【算数障害】算数や計算、物事の推論が困難
3. 4歳児の知的・精神的な発達の目安
4歳児の発達障害について理解を深めるには、まず4歳児がどのような成長過程にあるのかを把握しましょう。発達には個人差があるものの、主に生活習慣・言語・学習・社会性の面で成長がみられます。
■基本的な生活習慣が形成される
4歳になると基本的な生活習慣が形成され始め、食事や着替えといった身の回りのことを自分でできるようになる頃です。
<できることの目安>- 自分で衣服を脱いだり着たりできる
- 歯磨きをしてうがいができる
- 排泄やトイレの始末ができる
- おもちゃを片付けられる
- 衣服をたためる
- 箸を使って食事ができる
■知能・言語がともに発達する
4歳は記憶力が伸びる時期でもあるため、未来や過去の話ができる時期でもあります。語彙(ごい)も増え、質問が多くなるのも特徴です。また、知能が発達し、数を数えたり道具を使って工作したりする子もいます。
<できることの目安>- 過去・現在・未来について話せる
- 自分の名前や年齢を答えられる
- 大小や増減、方向などの位置関係が理解できる
- 自分で物語を考えて話す
- 歌や絵本のストーリーを覚える
- 1~10くらいまでの数を数えられる
- 文房具や道具などが使えるようになる
■社会性が身につき始める
4歳頃になると、自分以外の人に興味をもち、積極的にかかわろうとします。想像力が高まり、ルールを決めて遊んだり相手に合わせて遊んだりするでしょう。また、遊びやケンカを通して、「相手の気持ちを考える」「自分たちで解決する」などの社会性も身につく年齢です。
<できることの目安>- 自分の気持ちを言葉で表現しようとする
- ルールや役割を決めて遊ぶ
- 友だちと協力しようとする
- 相手の目を見て話したり聞いたりできる
4. 【4歳児】ASDのチェックリスト
ASDの特徴には、大きく分けて「コミュニケーションが難しいこと」「こだわりが強いこと」「感覚過敏」があります。
<4歳児のASDチェックリスト>- いつも一人遊びばかりしている
- 初めての物事や場所を極端に嫌う
- 位置や手順、やり方が変わることを嫌う
- 気に入った言葉やフレーズを繰り返す
- 自分の興味がある内容を一方的に話す
- 1つのことに集中するほか、こだわりが異常に強い
- 特定の音やにおい、刺激に対して過敏に反応する
5. 【4歳児】ADHDのチェックリスト
ADHDは行動面での症状が目立ち、集団生活をする機会が増える3~5歳は、障害に気付きやすい時期と言えます。集団生活に適応できているかどうかが重要な基準となるでしょう。
<4歳児のADHDチェックリスト>- 直前のことをすぐに忘れる
- 指示に従って最後までやることができない
- 順番を待てず、すぐに行動してしまう
- 席を立つ、走り回る、騒ぐ、叫ぶなどの行動が顕著に見られる
- 場の空気が読めず、話し過ぎたり唐突に答えたりする
6. 4歳児の場合LDの特徴は顕在化しにくい
学習障害は学習能力との関連が強いため、小学校入学後の7~9歳頃に特性が現れやすいと言われています。そのため、4歳の時点ではLDの特徴が顕在化しにくく、診断名をつけられない場合がほとんどです。
当てはまる特徴が多くても、発達障害と断定されるわけではありません。上記のチェックリストは、あくまで気になる傾向があるかどうかを判断するために使用しましょう。
7. 気になる症状があれば専門機関に相談してみよう!
保育の現場では、子どもたちが楽しく過ごせるよう、保育環境を整えることも大切な仕事です。子どもの様子や言動に違和感や気になる症状がある場合、まずは保護者に園内での様子を伝え、専門機関へ相談することをすすめましょう。
発達障害と診断された、あるいは発達上で気になる症状が認められた場合は、障害児通所支援による療育を始められます。支援を利用するためには、「通所受給者証」が必要です。受給者証の取得には、医師意見書・診断書・療育手帳のいずれかが必要になるため、その点も併せて保護者に伝えるとよいでしょう。
8. 発達障害支援の具体例を紹介!
療育の内容は施設によって異なりますが、4歳児の場合、身辺自立のための支援や学習支援、運動プログラムを行うのが一般的です。
ここでは、代表的な2つの例を紹介します。
■療育・ソーシャルスキルトレーニング(SST)
療育の中でも代表的なのが、「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」です。4歳児のソーシャルスキルトレーニングでは、コミュニケーションや集団生活を円滑にする技術の習得を狙いとし、遊びを通して集団生活のルール・スキルが学べるよう、個別または集団で訓練します。
同じシチュエーションで繰り返し練習することにより、社会生活でも活かせるようになるでしょう。
■ペアレント・トレーニング
療育は基本的に子どもに対する取り組みですが、ペアレント・トレーニングでは保護者に向けた講義やワークが実施されます。ロールプレイや演習などの活動を通して、家庭内での子どもとのかかわり方を学びましょう。また、グループで取り組むことで、同じ障害をもった子どもの保護者と悩みを共有したり、家庭での工夫を参考にしたりといったメリットがあります。
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子どもの発達障害は幼児期のうちに気付いてあげることで、必要な支援や環境を早めに整えられます。日頃から子どもをよく観察し、子どもと保護者が適切なサポートを受けられるよう、専門機関や支援への橋渡しをすることが求められるでしょう。
とはいえ4歳児の発達はまだ個人差が大きく、一概に発達障害と断定はできません。もしも保育をしていて気になることがあった場合は、同僚や主任保育士などに相談して指示を仰ぐようにしましょう。