リトミックとは?保育のねらいやメリット、やり方のコツも紹介
保育所や幼稚園でも取り入れられている「リトミック」は、一体どんなことをするのか、子どもにとってどのようなプラスの効果があるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。リトミックは、ピアノや水泳などに比べるとまだなじみがなく、その内容やもたらす効果について疑問の多い人もいるかと思います。本記事では、リトミックのねらい、やり方、実施する上でのポイントなどについて紹介します。子どもたちの成長にリトミックがどのように関わるのかを知り、保育に取り入れる際の参考にしてください。
1. リトミックとは?保育でのねらい
リトミックとは、どのような目的でどのように行われるのか、保育の現場で行う際のねらいについて、説明します。リトミックの目的をしっかり把握し、子どもたちにとって有意義な時間となるように、理解を深めておきましょう。
■リトミックの由来
リトミックは、作曲家であり、教育家でもあるエミール・ジャック=ダルクローズが1905年に発表した音楽教育法です。音楽に合わせて体を動かすことから始まり、楽器を使って演奏したり、友達と協力して発表したりするなど、年齢に合わせて段階的に成長を促す教育法です。音楽に関する能力だけではなく、身体的な面、感覚的な面、知的な面など、あらゆる角度から子どもたちの感覚を刺激し、個々が持つ潜在的能力を引き出す効果が期待できるといわれています。
■リトミックの保育でのねらい
保育の現場でリトミックを行う際のねらいとしては、以下3つのことが考えられます。
● 音楽を全身で感じ、リズムに合わせて伸び伸びと体を動かす楽しさを体感する
● 音やリズムに触れ合うことで、感性、創造力、表現力を養う
● 友達と音楽・表現の楽しさを共有する
リトミックは、これら人間の持っている基礎能力を最大限に引き出す効果があると注目されています。特に、感覚が敏感な乳幼児期に対しては、「楽しく成長を促していける」としており、保育の現場でも取り入れられているようです。他には、発達障害児に対しても、バランス良く、自然に成長を促す効果が期待できるとして現在注目されており、保育所や幼稚園だけではなく、発達支援に携わる施設でも導入されています。
無料会員登録はこちら2. リトミックのメリット
幼児期にリトミックをする主なメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
1. 身体機能の向上
2. コミュニケーションスキルの向上
3. 集中力の向上
4. リズム感・感覚が研ぎ澄まされる
一つずつ詳しく解説しますので、参考にしてみてください。
■身体機能の向上
音楽に合わせて楽しみながら体を動かすリトミックは、幼児期に身に付けていく運動面の成長をサポートしてくれます。例えば「歩く・走る・ジャンプ・スキップ」といった動作や、「ねじる・這う・揺れる・転がる」といった足・腰・肩などの全身運動を行うことで、上手な体の使い方を楽しく身に付けることができます。さらに、続けていくことでバランス感覚や柔軟性が育まれ、身体機能の向上につながっていくと考えられています。
■コミュニケーションスキルの向上
コミュニケーションに必要なのは、「聞く力(聴く力)」と「話す力」です。相手が何を伝えようとしているのか、自分がどうしたいのか、意思の疎通をきちんと行うことが重要となります。
リトミックでは、友達や先生と一緒に活動するので、相手の考えに耳を傾けたり、自分の考えを分かりやすく伝えたりする力が育ちます。初めは、意見がぶつかり合ったり、気持ちを伝えられなかったり、うまくいかないこともあるでしょう。しかし、リトミックは、同じ目的を達成する仲間として友達と協力する場面が多くなるため、他者とのコミュニケーション能力が自然に養われていくといわれています。
■集中力の向上
集中力とは、一つの事に対する注意や意識を集め、物事に取り組む能力のことです。その力を高めるためには、物事だけに注目して関係のない情報を遮断することが必要です。
リトミックは、音楽や音をしっかり聞いていないといけないので、音楽と音に自然と集中することになります。また、友達と何かをすることも多いので、音楽だけではなく、周りの様子も注意して見なければなりません。音楽に合わせて動くリトミックなら、友達と楽しみながら自然と集中力が養われていきます。また、繰り返し行うことや、年齢に合わせて組み合わせを増やしてあげることで、より集中力の向上に期待が高まります。
■リズム感・感覚が研ぎ澄まされる
音楽のテンポや音の調子に合わせることを「リズムに乗る」といいますが、実は、発達面においてもリズム感が必要なことが多くあります。例えば、「スキップ」は、幼児期に自然とできる子どもも多くいますが、運動が苦手な子どもはできないといったことも少なくありません。このスキップも一定のリズムでステップを踏む動作となるので、音楽に合わせてスキップのリズムを覚えれば、できるようになります。
リトミックは、音楽に合わせて手をたたいたり、ステップを踏んだりすることが多いので、繰り返し行うことで楽しみながらリズム感が鍛えられていきます。また、聞こえた音によって違う動きをするためには、記憶力、判断力、表現力など、さまざまな能力をフル稼働させる必要があります。そのため、リトミックは、全身の感覚を研ぎ澄ますトレーニングにもなると考えられています。
無料会員登録はこちら3. 年齢別のリトミックの例
乳幼児期から行われるリトミックですが、年齢によって内容は異なります。ここでは、それぞれの年齢にできる動きや内容について紹介します。子どもたちが楽しめる内容であることが最も重要なポイントになるので、年齢に合った内容をしっかり理解しておきましょう。
■0歳
この時期は、音楽に慣れ親しむことを目的としたリトミックとなります。0歳児は、音楽に合わせて何か動きを付けることは難しいので、さまざまな音楽を聞かせていろいろな音やリズムで楽しませてあげましょう。他にも、子どもを抱っこして音楽に合わせて動いたり、リズムに合わせて子どもに触れてあげたりするなど、親子のスキンシップをメインとします。大好きなママの楽しそうな表情や声などを聞く(聴く)ことで、赤ちゃんの五感にも良い刺激を受けることができます。
■1歳
いろいろな動きができるようになる1歳児は、少しずつ自己表現を習得していきます。先生の呼びかけに返事をしたり、カードを見ながら楽器をたたいてみたり、パパやママが見守る中、自分一人でできることを増やしていきます。また、音の高低差の聞き分けが可能となるので、動きと一緒に音階を覚えることができます。少しずつ音楽的要素が加わることで、リトミックの目的である「子どもの潜在的能力」を引き出すことにつながる内容となっていきます。
■2~3歳
2~3歳児は、言語や身体機能の発達が進みます。また、コミュニケーション能力も備わってきますので、友達と一緒に活動することの楽しみや、道具を使った動きを習得することができます。動物のまねをしたり、車や電車などの乗り物になりきったり、表現力が備わってくるのもこの時期です。音や音楽をよく聞いて子ども自身がどんな動きをするのか判断することで、表現力、判断力はもちろん、集中力も身に付いていきます。リトミックを通して、みんなの前でも恥ずかしがらずに自己表現ができるようになると、保育所や幼稚園での活動も積極的に参加することができるでしょう。
■4~5歳
子ども自身でいろいろなことができるようになる4~5歳児は、子どもたちだけでリトミックを行うことができます。音楽や音をしっかり聞き分け、自分で判断して動くことができるため、より本格的なリトミックの内容となっていきます。
子ども自身の性格や、得意・不得意などが分かりやすいのもこの時期の特徴です。その様子を見て、友達に前向きな声掛けを行うなどの思いやりが芽生え、人としての成長を感じることもできるでしょう。さらに、ルールや役割なども理解できるようになるので、友達と協力する力、考える力が養われていくといわれています。そういった経験をリトミックで楽しく学ぶことで、充実した集団生活を送る手助けとなるでしょう。
4. 保育でのリトミックのやり方
保育に取り入れられるリトミックのやり方を3つ紹介します。
● 音楽に合わせて体を動かす
● 〇〇ごっこでまねをする
● 音を聞いて自由に表現する
それぞれの詳しいやり方について、解説します。
■音楽に合わせて体を動かす
音楽を流したり、ピアノを弾いたりしながら、それに合わせて体を動かして楽しみます。年齢によってできる動きが異なりますので、子どもたちが無理なくできる動きで楽しみましょう。
0~1歳児は、音楽を聞いて「体を揺らす」ことはできるかもしれません。また、先生が一緒に楽しく体を揺らすことで、子どもたちも楽しい時間だと感じてくれるでしょう。
2~3歳児になると、リズムに合わせて手をたたいたり、楽器を鳴らしたりすることができるようになります。音のテンポや強弱を変えることで、より活動の幅が広がるでしょう。
4~5歳児になると、音や音階を聞き分けることができるようになる子どもも多いので、歌や手遊びに合わせて、体を動かすことが可能です。子どもたちが感じたまま表現を楽しみ、保育者が積極的に表現を褒めることで、友達の良さにも気付けるようになるでしょう。
■〇〇ごっこでまねをする
動物や電車など、身近な物のまねをする「ごっこ遊び」で楽しみましょう。まねする物をモチーフにした曲を流すと、子どもたちもイメージしやすいでしょう。また、保育者が具体的な特徴を言葉で伝えることで、より想像が膨らみ、細かな表現力も養われます。他にも、音やテンポのイメージに合う動物を表現することで、写真やイラストだけでは分かりにくい特徴も覚えることができます。
■音を聞いて自由に表現する
音を聞いて自由に表現することはやや難しいので、5歳くらいの子どもやリトミックに慣れた子どもに向いています。
子どもの発想は、時には大人が思いつかないような素晴らしい表現を見せてくれます。音や音楽を聞いて、それに合う動きを自由に表現してもらい、子ども一人一人の感性を大切に育てましょう。また、音の感じ方を話し合いながら、保育者も一緒になって、表現を思いっきり楽しむのも、リトミックならではの良さの一つであるといえます。
5. 保育でリトミックを行う場合のポイント
「子どもたちの成長や発達を促す効果が期待されるリトミックを、保育の現場に取り入れたい」と考えている保育者も多いのではないでしょうか。実際、保育所や幼稚園でリトミックを取り入れているところもあります。その内容は、歌や手遊びなど簡単な物から、本格的なリトミックまでさまざまです。これからリトミックを取り入れたいと考えている人のために、4つのポイントをまとめてみました。
■保育士自身が楽しむ様子を伝える
最初は、子どもたちも何をしていいか分からなかったり、恥ずかしがったりして、思うように楽しめないかもしれません。しかし、先生が笑顔で明るく楽しそうな声掛けをすることで、「何か楽しいことが始まるのかな?」と、子どもたちも安心し、積極的に参加してくれることでしょう。
リトミックによる子どもたちへの効果をあれこれ頭で考えるよりも、保育士自身がリトミックを純粋に楽しみ、音楽、音、さまざまな動きなどに対して、子どもたちが意欲的に取り組める雰囲気を作ると良いでしょう。
■子どもの自由な表現を尊重する
子どもたちと何かをするときに大人が考えがちなことは、「こうしてほしい」という願望です。リトミックでも同じで、「こんな動きをしてほしい」という思いが頭をよぎることもあるでしょう。しかし、リトミックで大切なことは、「自分で考えて生み出した表現を楽しむこと」だといわれています。「こうでなければならない」という大人目線の考えは持たず、子どもの自由な表現を尊重し、伸び伸びと楽しめる環境を作りましょう。
■ピアノなどの楽器を使う
CDを用意し、曲を流して行うのも良いですが、子どもたちの動きや流れを見て対応できるピアノや楽器を使うと、より理想的です。子どもたちの反応に合わせて対応することで、表現の幅を広げていくことができるでしょう。また、活動の内容にも柔軟さが出るので、保育士の意図する音楽を取り入れやすくなります。
楽器は、保育士が演奏しやすい物を選びます。ピアノであれば、保育士や子どもたちにとってなじみのある楽器なので、テンポや強弱に加え、鍵盤をなめらかに流れるように弾く「グリッサンド」などの奏法を交えて工夫できると良いでしょう。
■テンポを使い分ける
一定のリズムに慣れてくると、集中力が散漫になり、飽きてくる子どももいるかもしれません。そんなときは、テンポをうまく使い分けて、音や音楽に楽しく集中させましょう。子どもたちは、テンポが少しずつ速くなるのを感じると、目をキラキラさせながら加速に付いて行きます。「もっと、もっと!」と速めると、子どもたちは興奮し、さらに集中力が増していきます。速めた後は、ゆっくりとしたテンポに戻してあげると、さらに楽しくなるでしょう。また、速いままで終わるよりも、ゆっくりとしたテンポに戻してあげることで収まりが良くなり、子どもたちの達成感も高まります。こうしてテンポを変えるだけでも、子どもたちの頭と体がフル回転し、集中力アップにつながることでしょう。
無料会員登録はこちら6. 保育にリトミックを取り入れよう
子どもたちの可能性を大きく広げてくれるリトミックは、音楽的要素だけではなく、身体機能、集中力、表現力など、さまざまな面での発達をサポートしてくれます。また、協調性や自立心など、人としての成長にも期待できるといわれています。
保育所や幼稚園に通う子どもは、自由気ままな年頃なので、みんなを同じ方向へ導くといった苦労は絶えないかと思います。だからこそ、リトミックを通して、一つの物事に集中する力、協力する力が付けば、教室内の雰囲気や日々の活動への取り組みなどにおいても、きっと変化がみられると思います。
リトミックは、特に資格などの必要がなく、誰にでも教えることが可能です。幼児期の敏感な時期だからこそ、リトミックのメリットを生かした保育を取り入れることで、子どもたちの園生活は、より充実したものとなることでしょう。
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