地域包括支援センターの役割とは?事業内容や在籍している職種についても解説
社会福祉士やケアマネジャーの求人を見ていると、地域包括支援センターという存在をよく見かけます。しかし、地域包括支援センターが具体的にどのような施設なのか知っている方は、あまり多くないかもしれません。
そこで以下では、地域包括支援センターの役割や行なっている事業内容、在籍している職種について詳しく解説します。
1. 地域包括支援センターとは
地域包括支援センターは、「地域包括ケアシステム」を実現するための中心施設です。
具体的には、高齢者を介護や医療、保険、福祉などの多方面からサポートしています。
地域包括支援センターの設置主体は各自治体ですが、自治体から委託を受けた社会福祉法人や社会福祉協議会、民間企業などが管理・運営しているケースもあります。
なお、 地域包括支援センターの設置数は、令和3年4月末時点で5,270か所、支所を含めると7,350か所設です。
以下では、地域包括支援センターの役割や設置区域、利用対象者を解説します。
■地域包括支援センターの役割
地域包括支援センターの役割は、地域包括ケアシステムを実現するための中心施設として、高齢者の生活上の悩みを解決したり、適切なサービスにつないだりすることです。
各分野の専門職員がチームとして連携しながら、地域の高齢者の暮らしをサポートします。
・地域包括ケアシステムとは
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく生活できるよう、地域一体となって支援する体制のことです。2025年には超高齢社会を迎える日本ですが、厚生労働省は備えとして地域包括システムの構築を推進しています。
■設置区域について
地域包括支援センターの設置区域は各自治体の判断に委ねられていますが、設置の目安は人口2~3万人程度の規模に1か所です。 およそ30分以内に必要なサービスを提供できる範囲を目安に設置されています。
■利用対象者について
地域包括支援センターの利用対象者は、対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者とその関係者(家族や地域住民)です。
支援が必要な高齢者とその家族が離れて暮らしている場合は、支援対象の高齢者が住んでいる地域の地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。
2. 地域包括支援センターが行なっている事業内容
地域包括支援センターが行なっている主な事業内容は以下の4つです。
■高齢者の相談を受ける
地域包括支援センターでは、高齢者の悩みを幅広く受け付けています。
主任ケアマネジャーや社会福祉士、保健師が配置されているため、高齢者の悩みを適切に解決したり必要なサービスや制度を紹介したりすることが可能です。
■権利擁護の実現
地域包括支援センターでは、高齢者の権利を守る「権利擁護」を行なっています。
具体的な内容は、高齢者に対する虐待や詐欺の予防・早期発見です。
必要に応じて、「成年後見制度」や「地域福祉権利擁護事業」の紹介と手続き支援も行います。
■ケアマネジメントのサポート
地域包括ケアシステムを実現するためには、地域包括支援センターで働く職員の協力体制の向上が必要不可欠です。
そのため、高齢者と地域や各種専門家をつなぐ役割のあるケアマネジャーを対象とした研修会や相談会などを開催し、ケアマネジメントのサポートも行なっています。
■介護予防ケアプランの作成のサポート
介護予防ケアプランとは、介護レベルの低い高齢者を対象にしたプログラムです。
地域包括支援センターに訪れた高齢者の目標をヒアリングし、その目標を達成するための具体的な方法や利用するサービスについてまとめます。
3. 地域包括支援センターの在籍職種について
先述の通り、地域包括支援センターには主任ケアマネジャーや社会福祉士、保健師が在籍しています。
以下では、それぞれの職種について詳しく解説します。
■主任ケアマネジャー
主任ケアマネジャーとは、介護支援専門員資格の上位資格である「主任介護支援専門員」の資格を保有しています。
地域包括支援センターでは、資格を活かして介護全般にかかわる相談対応やケアマネジャーへの助言など、包括的かつ継続的なマネジメント業務を行なっています。
また、支援困難事例への指導・助言や地域ケア会議の開催なども主任ケアマネジャーの仕事です。
■社会福祉士
社会福祉士は、社会福祉専門職の国家資格を保有した、別名「ソーシャルワーカー」とも呼ばれる職種です。
地域包括支援センターでは、総合相談や高齢者の権利擁護事業を担っています。
高齢者が暮らしている自宅や施設を訪問して高齢者の状況や安否を確認するのも、社会福祉士の仕事です。
■保健師
保健師は、人々の心と体の健康をサポートする職種です。
地域包括支援センターでは、介護予防プランの作成やセミナーの開催指示、予防対策の教室など、予防介護事業のマネジメントを行います。
4. 地域包括支援センターの職員に必要な要素とは?
地域包括支援センターの職員に必要な要素は、「総合性」と「包括性」、「継続性」、「予防性」の4つです。
■総合性
高齢者が抱えている悩みは多岐にわたります。
一人ひとり抱えている悩みも異なるため、幅広い知識が必要です。
業務内容も高齢者の相談対応やケアプランの作成に加え、他の専門職のスタッフや病院、施設などとの連携などあらゆる方面で活躍します。
地域包括支援センターの職員は、毎日変化を求めたい方や、困っている人の悩みを解決したいという人に向いているでしょう。
■包括性
地域包括支援センターでは、訪れた高齢者の悩みを多方面から解決します。
そのため、さまざまな情報を1つにまとめる能力が必要です。
特に、主任ケアマネジャーにもなると、ケアマネジャーをまとめるマネジメント力も求められます。
■継続性
地域包括支援センターに訪れた高齢者の悩みは、長期的な目線で解決していくことも少なくありません。
高齢者に適切なサービスを提供し続けるためにも、地域包括支援センターの職員には継続性が求められます。
■予防性
特にケアプランを作成する際は、どのような方法で高齢者一人ひとりの目標を達成し、介護予防につなげるかを考える必要があります。
5. 地域包括支援センターの勤務状況
地域包括支援センターの勤務状況について詳しく解説します。
■夜勤の有無や休みについて
地域包括支援センターは、平日の日中に開館していることがほとんどです。そのため、基本的に夜勤はなく、土日休みの施設が多いでしょう。
また、正社員として雇用されることが多く、日中の決まった時間に働けます。
6. 地域包括支援センターの課題とは?
地域包括支援センターには現状、職員一人ひとりの業務量が多いことや、関係各所との連携が難しいなどの問題点があります。また、自治体によって取り組みの質に差があるのも課題です。
これらの課題を解消するためにも、業務の生産性を向上させたり人員体制の強化を行なったりするなど、地域包括支援センターがうまく機能するシステム構築が求められています。
7. まとめ
地域包括支援センターとは、高齢者を地域一体となって支援する地域包括ケアシステムを実現するために設置された施設です。
高齢者を介護や医療、保険、福祉などの多方面から支援するため、施設内には主任ケアマネジャーや社会福祉士、保健師が配置されています。
地域包括支援センターは設立されてから歴が浅いため、課題点も残りますが、土日休みで夜勤もないため、大変働きやすい職場と言えるでしょう。