福祉用具専門相談員とは?仕事内容や資格、難易度について解説
福祉用具専門相談員とは、高齢者やその家族の福祉用具選びのお手伝いをはじめ、一人ひとりに合わせた調整やメンテナンスなどを行う福祉用具の専門家です。この記事では、福祉用具専門相談員の仕事の内容や、資格取得について詳しく解説します。
1. 福祉用具専門相談員ってなに?
福祉用具専門相談員の仕事は、利用者やその家族のために福祉用具の取り扱いを説明したり、一人ひとりに合うように調整を行なったりします。国家資格ではありませんが、専門的な知識のある公的資格として、介護保険制度における福祉用具をレンタル・販売する事業所には、2名以上の福祉用具専門相談員を配置することが義務付けられています。
福祉用具は種類がとても多く、利用者が自分に合うものを選ぶことは簡単なことではありません。福祉用具専門相談員が豊富な知識を活かして、利用者にとって最適な福祉用具を選ぶアドバイスを行い、使い方を詳しく説明することが仕事です。
福祉用具を取り扱う貸与事業所や販売店、福祉施設、介護施設など活躍の場はどんどん広がっています。
2. 福祉用具専門相談員の仕事内容
福祉用具専門相談員の仕事について、詳しく見ていきましょう。
■選定相談
利用者の心身の状態や生活環境、住まいの状況を確認し、どのような福祉用具があるとより暮らしやすくなるかを考えます。
福祉用具にはたくさんの種類があり、利用者やご家族だけで選ぶのは困難です。そんなときに親身になってサポートを行うのが、専門家である福祉用具専門相談員の仕事です。
■適合・取扱説明
レンタル・購入した福祉用具を、利用者の体や住まいに合わせて調整します。
また福祉用具を安全に使うために、利用者や家族に取り扱いの説明を行うのも大切な仕事です。
■計画作成
福祉用具をレンタル・購入する前に、利用者にとってどのような福祉用具が合っているのかを考え、利用計画を立てます。
利用者や家族の希望、ケアマネジャーのケアプランなどを確認しながら、より効果的に福祉用具を活用できるようにすることを目的としています。
■モニタリング
モニタリングでは、福祉用具をレンタル・購入した利用者を定期的に訪問し、福祉用具が正しく使われているか確認します。また、故障や不備がないかをチェックして、常に安心して福祉用具が使えるようにサポートするのも、モニタリングでの大切な役割です。
モニタリングは介護保険制度において、年に2回行うことが義務付けられています。
3. 福祉用具専門相談員が活躍する職場
近年は高齢化が進んでおり、福祉用具専門相談員の活躍する職場がどんどん増えています。以下では具体的な職場について、紹介します。
■福祉用具貸与事業所
福祉用具貸与事業所とは、介護保険法で定められている介護事業所としての基準をクリアした事業所のことです。福祉用具貸与は、福祉用具のレンタルや販売をしている店舗のほか、デイサービスや介護支援を行う施設など、さまざまな事業所で行われています。
福祉用具専門相談員は必ず2名以上が配置されており、利用者やその家族が福祉用具を選ぶサポートをしています。
■福祉用具販売店
福祉用具販売店は福祉用具貸与事業所と同じく、福祉用具専門相談員を2名以上配置することが義務付けられている施設です。福祉用具にかかわる仕事が中心で、学んだ知識を活かして働くことができます。
また、福祉用具を販売しているホームセンターやスーパー、ドラッグストアなどでも福祉用具専門相談員は活躍しています。
■特別養護老人ホーム
常に介護が必要な高齢者の入居する特別養護老人ホームでは、介護職としての仕事をしながら福祉用具についての知識や豊富な経験を活かせます。
■介護老人保健施設
高齢者が施設から自宅へ戻るためのサポートやリハビリなどを行う介護法人保健施設は、在宅介護とのつながりも深く、福祉用具専門相談員として介護用具に関する相談を受けることも多くあります。
4. 福祉用具専門相談員の資格
福祉用具専門相談員の資格は、都道府県が指定している研修事業者が行う「福祉用具専門相談員指定講習」を受講し、修了評価試験に合格することで取得できます。
以下の介護に関係した資格を所有している場合は講習の受講は不要です。
● 保健師
● 看護師
● 理学療法士
● 作業療法士
● 義肢装具士
● 介護福祉士
● 社会福祉士 など
■受験資格
福祉用具専門相談員指定講習には、特に受講資格は決められていません。そのため、介護職を未経験の場合でも受講可能です。
詳しい要件は、研修機関によって異なる場合もあるので、受講をする際に事前に確認をしましょう。
■カリキュラム・難易度
カリキュラムは座学と実技演習があります。
大まかな流れは以下の通りです。
1. 福祉用具と福祉用具専門相談員の役割(2時間) 2. 介護保険制度等に関する基礎知識(4時間) 3. 高齢者と介護・医療に関する基礎知識(16時間) 4. 個別の福祉用具に関する知識・技術(16時間) 5. 福祉用具にかかわるサービスの仕組みと利用の支援に関する知識(7時間) 6. 福祉用具の利用の支援に関する総合演習(5時間) |
トータル50時間の講習を6〜8日かけて行います。
合格率などは非公開となっていますが、しっかりと講習を受けていれば合格を目指せる程度の難易度です。
5. 併せて取得したい資格
さらに福祉用具の知識を深めてスキルアップを目指す人や、福祉用具を使う人のために知識を深めたいという人におすすめの資格をご紹介します。
■福祉住環境コーディネーター2級
高齢者や障害者にとって住みやすい住環境を提案するのが、福祉住環境コーディネーターの仕事です。福祉用具だけでなく、家のバリアフリー化や、暮らしやすい家を新築したいという方にアドバイスができます。
福祉住環境コーディネーターは3級から1級までありますが、2級以上があれば、住宅改修費支給制度を利用するための理由書が作成できます。この制度は、要支援者や要介護者の住まいの改修にかかる費用の9割相当を払い戻してもらえるというものです。
そのため、福祉住環境コーディネーター2級以上を取得していれば、福祉用具専門相談員としてよりニーズが高まると言えるでしょう。
6. 福祉用具専門相談員に向いている人
福祉用具専門相談員に向いているのはどのような人なのか、その特徴を4つご紹介します。
■コミュニケーション能力がある人
福祉用具を選ぶためには、利用者の心身の状態や住環境、介護をしている人の状況やニーズなどを聞く必要があります。
また介護福祉の現場では、ケアマネージャーなどの介護サービスを行う人たちとの連携も大切です。介護にかかわっている人たちと信頼関係を築き、協力し合うためにはコミュニケーションが欠かせません。
また、福祉用具貸与事業所や販売店で勤務する場合は営業職としての役割もあるため、福祉用具メーカーとのやり取りも必要です。
さまざまな立場の人とコミュニケーションを円滑にとることができる人は、福祉用具専門相談員に向いていると言えるでしょう。
■観察力がある人
福祉用具専門相談員は、利用者やご家族から伺った要望や自宅の様子から、どのような福祉用具が必要なのかを判断します。
たくさんある福祉用具の中から、一人ひとりに合うものを選ぶためには、体や心の状態だけでなく性格や癖など細かな部分にも配慮しなければなりません。
そのために大切なのが、少しの情報から多くのことに気付くことができる観察力です。
利用者と家族の間でのプライベートな会話やケアマネージャーからの情報、年に2回のモニタリング時に見た様子など、福祉用具を選ぶヒントはさまざまなところにあります。
一度選んだ福祉用具がずっと最適であるとは限りません。現状に合わせて適した福祉用具を提案できれば、より利用者が暮らしやすくなり、事故やトラブルを防ぐことにもつながるでしょう。
■好奇心旺盛な人
福祉用具は幅広いニーズに対応するため、次々と新しい商品が開発されています。そのような福祉用具業界の最新の情報を積極的にキャッチしようとする好奇心旺盛な人は、福祉用具専門相談員に向いています。
メーカーさんから話を聞いたり展示会に出向いたりなど、常に自分の知識を更新する意識をすれば、利用者やケアマネージャーから頼られる存在になるでしょう。
■聞き上手な人
最適な福祉用具を提案するためには、利用者の本当の気持ちを知ることが大切です。そのために必要なのが「聞く」ことです。
利用者や家族は、福祉用具について詳しく知らない場合も多く、どのような相談をすればよいかわからないという人も少なくありません。
手続きなどの事務的なやり取りだけでなく、利用者と家族の何気ない会話などにも耳をかたむけるような聞き上手な人は、福祉用具専門相談員にふさわしいと言えるでしょう。
7. 福祉用具専門相談員の年収
求人ボックスのデータによれば、福祉用具専門相談員の平均年収は約336万円で、年収幅は257〜438万円です。
地域や勤務先、スキルなどによる違いは少なく、総務省統計局が発表している日本の平均年収値である433万円よりは低くなっています。現在、厚生労働省は高齢化によって今後さらに介護職の必要性が高まることに対応するため、介護職の人材確保の取り組みを行なっています。その一環として介護職員処遇改善加算制度が導入されました。福祉用具相談員は対象ではありませんが、介護職を兼任することで制度の対象に加わります。
キャリアアップしながら給料も増やせるので、これからの福祉用具専門相談員の働き方の1つとして選択する人も増えるでしょう。
8. 福祉用具専門相談員の将来
高齢化社会の日本では、高齢者が安心して暮らしていけるように、福祉用具が活躍する場面がこれまで以上に増えると予想されます。
また福祉用具貸与を行う事業所では、福祉用具専門相談員を2名以上配置することが介護保険法で定められており、需要がなくなることはありません。
さらに介護がより身近なものとなり、福祉業界だけでなく百貨店やドラッグストア、スーパーなどでも福祉用具の取り扱いが増える傾向にあるため、福祉用具専門相談員の活躍の場は広がるでしょう。
専門性の高いサービスを提供できる福祉用具専門相談員の将来性は高く、今後も多くの人の暮らしを支えるために必要とされる仕事と言えます。
9. まとめ
福祉用具専門相談員は、介護が必要な人の暮らしを福祉用具でサポートする仕事として、注目されています。福祉用具貸与事業所や販売店、介護施設や福祉施設など、活躍する職場もさまざまで、自分に合う場所がきっと見つかります。
介護職が未経験の人でも資格を取得することが可能なので、高齢者のためになる仕事をしたいと考えている方は、この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。