サービス提供責任者とはどんな仕事?必要な資格や魅力について紹介
介護職で働いた経験がある人なら、誰もが「サービス提供責任者」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
介護業界では「サ責」とも呼ばれ、訪問介護サービスの重要な役割を担っています。
今回はサービス提供責任者について、仕事内容や魅力を紹介します。
サービス提供責任者になるために必要な資格も解説するので、これから介護職の道を目指そうとしている方や介護業界に興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
1. サービス提供責任者とは?
サービス提供責任者とは、ケアマネジャーが考案したケアプランに基づいて「訪問介護計画書」を作成し、スムーズな介護が行われるようヘルパーに指示を与える役職のことです。
ケアマネジャーおよびヘルパーと利用者の間を取り持つ、介護サービスの管理・調整役を担っています。
高い介護の知識や経験、コミュニケーション能力が問われ、訪問介護事業所のリーダー的存在と言えるでしょう。
■ケアマネジャーとはどう違う?
同じく介護サービスのマネジメント業務を行う役職として、「ケアマネジャー」(介護支援専門員)が挙げられます。
ケアマネジャーは訪問介護サービスをはじめ、介護関連の事業所と連携し、利用者とその家族の希望に沿ったケアプランを作成する人です。
現場の介護スタッフと利用者を対象にサービスの充実化を図るサービス提供責任者に対して、介護事業所と利用者をつなぎとめる役割を担っている点が大きな違いと言えるでしょう。
サービス提供責任者はケアプランよりも具体的な介護計画を立案することが求められます。
介護スタッフの1人として、実際の介護に携わる場合もあります。
■勤務する主な施設
サービス提供責任者の主な勤務場所は、訪問介護事業所です。
訪問介護事業所とは、要支援1・2または要介護1~5の認定を受けた高齢者の自宅にて、訪問介護サービスを提供する事業所を指します。
ホームヘルパーが決められた曜日に利用者宅へ訪問し、食事・排泄・入浴などの身体介護と掃除・洗濯・買い出しなどの生活援助を行うことで、利用者本人の生活自立を後押しするのが事業の目的です。
サービス提供責任者は、利用者40名の事業所において1名以上の配置が義務付けられています。
2. サービス提供責任者の仕事内容
サービス提供責任者の仕事は多岐にわたり、デスクワークからヘルパーのサポートまでさまざまです。
状況によっては、サービス提供責任者自身が利用者の介助を行うこともあります。
■介護の利用申し込みや相談への対応・調整
サービス提供責任者は、訪問介護の利用申請時に、利用者の方とその家族が必要とするサービス内容を把握しなければなりません。
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利用者一人ひとりに的確な介護サービスを提供するため、ヘルパーや周辺環境、手続きなどの調整を行います。
■利用者の方やご家族との面談
利用者の自宅を訪れ、訪問介護を行うのに適切な環境であるかを確認するのもサービス提供責任者の重要な仕事です。
また、必要に応じて面談も行い、利用者の方が抱えている問題や家族の要望を今後の介護サービスへと反映させます。
■訪問介護計画書の作成
先述したように、サービス提供責任者の大切な業務の一つとして、訪問介護計画書の作成があります。
訪問介護計画書とは、支援内容や利用者の方の課題および目標、利用日、家族の希望事項といった具体的なプランを示したもの。
完成した計画書に問題がなければ、利用者の方と家族の同意を得たうえで訪問介護が始められます。
また、サービス開始後も定期的に利用者の自宅を訪問し、モニタリングを通して介護計画書のチェック・見直しを行うことが大切です。
■ヘルパーの教育や指導
介護サービスの品質向上のため、ヘルパーに指示を与えたり技術指導や研修を行なったりするのもサービス提供責任者の重要な仕事のひとつ。
また勤怠やシフトの管理調整、クレームにも対応します。
■サービス担当者会議への出席
サービス提供責任者はサービス担当者会議へ参加し、ケアプランに関する意見や提案を交わします。サービス担当者会議とは、ケアプランについて関係者間で話し合う重要な会議です。
会議の参加者はサービス提供責任者のほかに、ケアマネジャーやヘルパー、利用者およびその家族が出席します。
3. サービス提供責任者になるためにはどうすればいい?
サービス提供責任者とは、あくまで役職名であるため、そうした名の資格や研修があるわけではありません。
では、サービス提供責任者となるにはどうしたらよいのでしょうか。
役職に就くためには以下の要件を満たしている必要があります。
■実務者研修を修了している必要がある
介護福祉士実務者研修(以下「実務者研修」という)は、介護サービスの品質向上を目的に行われる研修です。
介護職のキャリアパスに重要な資格とされ、訪問介護サービスの中心的存在であるサービス提供責任者も例外ではないでしょう。
実務者研修の修了資格を得るには、実務者研修の講座があるスクールにて指定のカリキュラム(450時間)を受けなければなりません。
ただし、要件に該当する資格を持っていれば一部受講科目が免除されます。
加えて、土日の開講や通信講座を行なっているスクールもあるため、働きながら資格取得を目指すことも十分可能です。
スクールによっては介護職員初任者研修の終了を受講条件にしている場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
■介護福祉士の資格を取得している
介護福祉士の資格を取得するには、「介護福祉士国家試験」に合格する必要があります。
しかし、誰でも受験できるわけではなく、3年以上の実務経験と実務者研修の修了資格を得ていることが要件です。
実務経験の年数にはパートやアルバイトで勤務したものも含まれます。
スクールに通って試験対策を行う選択肢もありますが、独学でも十分に対応できるため、自分に合った方法を選びましょう。
2017年までは、「3年以上の実務経験」と「介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)」の資格取得があれば、上記と同様にサービス提供責任者となることが可能でした。
しかし、訪問介護サービスの品質向上のため、2018年の社会保障審議会介護給付費分科会でこの任用要件は撤廃されています。
これからサービス提供責任者を目指す方は、注意が必要です。
4. サービス提供責任者の1日のスケジュール
サービス提供責任者が行う1日のスケジュールは、日や事業所によって異なりますが、ここでは基本的な流れについて紹介します。
時間 | 仕事内容 |
9:00 | 出勤および朝礼・事務処理 | 10:00 | 利用希望者からの申請や相談の対応 |
11:00 | 訪問介護計画書の作成 |
12:00 | 昼食・休憩 |
13:00 | 介護スタッフのヘルプ・サポート |
14:00 | 利用者の自宅への同行訪問 |
15:00 | 帰社・事務処理 |
16:00 | ヘルパーからの業務報告および面談などの対応 |
17:00 | 運営会議・事務処理 |
18:00 | 退勤 |
5. サービス提供責任者の魅力とは?
日々慌ただしく働くことも多いサービス提供責任者ですが、キャリアの面から言えば魅力に溢れています。
介護サービスは今後さらに重要性を増し、特にサービス提供責任者は訪問介護事業所での需要も高いため、将来性がある役職と言えるでしょう。
■給料が高い
サービス提供責任者は一般的なヘルパーに比べ、給与が高い傾向にあります。
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」では、サービス提供責任者が得た月の平均給与額は32万510円です。
対してヘルパーの平均給与額は約28万円で、サービス提供責任者のほうが4万円ほど高いことがわかります。
ただし、この金額はあくまでも平均額であるため、事業所や地域によって差があることを理解しておきましょう。
■正社員として雇われやすい
訪問介護事業所の一般職員は、パート・アルバイトなどの非正規社員であることがほとんどですが、サービス提供責任者は基本的に常勤専従のため、正社員として雇用されやすいでしょう。
安定した役職であるうえにデスクワークが業務の大半を占めていることから、体力的にも余裕のある働き方ができます。
■幅広い経験や知識を得られる
サービス提供責任者は、ケアマネジャーや医療従事者との関わりが深い職種です。
そのため、ヘルパーの深い経験や知識に加え、介護サービスについての幅広い知見を得られます。
自宅での介護を必要とする高齢者へ最適なサービスを届けたいと考える人にとっては、またとない機会と言えるでしょう。
6. サービス提供責任者の配置基準
先述したように、サービス提供責任者は訪問介護事業所において適切な配置が義務付けられています。
原則として、直近3か月の利用者40人につき常勤1人の配置がされ、以下のような基準に沿って人員数が増加していきます。
直近3か月の利用者数 | 配置人数 |
40人以下 | 1人以上 |
41〜80人 | 2人以上 |
81〜120人 | 3人以上 |
121〜160人 | 4人以上 |
161〜200人 | 5人以上 |
一般的なヘルパーに比べて人員数が限られるため、そもそもの求人数も少ないのが現状です。
ただし、上記はあくまでも最低限の人員数であり、事業所によっては基準よりも多くのサービス提供責任者を配置している場合もあるため、求人情報を確認してみることをおすすめします。
加えて、2015年から配置基準の特例が設けられ、次のような3つの条件を満たした事業所では、直近3か月の利用者数50人あたりに1人の配置が認められています。
● サービス提供責任者が常勤で3人以上配置されている
● ヘルパーとしての実労働時間が月30時間以下で、サービス提供責任者業務をメインとする常勤兼任者が1人以上配置されている
● サービス提供責任者の業務についてIT活用などの効率化がされている
■非常勤でもサービス提供責任者として働ける?
サービス提供責任者は常勤での雇用が大半ですが、非常勤でも勤務できる場合があります。
ただし、非常勤の場合は「常勤の勤務時間の1/2(週20時間)以上」の勤務が条件です。
都道府県ごとに配置基準が異なる可能性もあるため、勤務を希望するエリアを管轄している自治体の制度を確認してみましょう。
7. サービス提供責任者に向いているのはどんな人?
サービス提供責任者は、介護サービスの要を担う存在であることから、介護の実態や制度を十分に理解している人材が求められます。
また、利用者一人ひとりに対して細やかな配慮をし、最適な訪問介護計画書を作成する力も必要となるでしょう。
現場で働くヘルパーのマネジメントも行うため、さまざまな悩みや不満に対応することも大切です。
人と関わることが好きな方、コミュニケーションを取ることが得意な方が向いています。
8. サービス提供責任者のやりがい
サービス提供責任者は、計画書を作成することで、利用者のよりよい介護につなげられるというやりがいがあります。
適切な介護サービスを提供すればするほど利用者との間に信頼関係が生まれ、感謝の言葉をもらえる機会も増えるでしょう。
また、新人ヘルパーの教育を担当することも多く、現場に近いところで業務を行うため、職員の成長を間近に見られることに充実感を覚える方もいるようです。
9. サービス提供責任者のキャリアアップやキャリアチェンジにはどんなものがある?
サービス提供責任者は、介護職のキャリアアップやキャリアチェンジにも有利です。
次のような例を参考に、将来の働き方についても考えておきましょう。
■事業所長になる
サービス提供責任者の経験があれば、事業所長というさらなるステップアップの道が開けるでしょう。
大規模な会社では事業所の展開にも力を入れており、新しい事業所の所長としてサービス提供責任者の経験者を採用するケースもあります。
■独立して開業する
サービス提供責任者の介護サービスにまつわる知識と経験は、開業する際にも役立ちます。
資金調達や人員の確保は大変ですが、独立することで自分の思い描く介護サービスが実現できるでしょう。
■ケアマネジャーになる
他業種との関わりが深いサービス提供責任者であれば、ケアマネジャーへのキャリアチェンジに興味を持つ方もいるのではないでしょうか。
サービス提供責任者の訪問介護に関する知見は、居宅介護支援事業所でも活かせます。
居宅ケアマネになれば、訪問介護計画書を作成した経験がケアプラン考案の際に役立つことでしょう。
10. まとめ
サービス提供責任者は、介護業界において今後も活躍が期待される役職です。
役職に就くことは簡単なことではありませんが、任用されれば、自身が考える理想の介護の形へときっと近づけます。
介護職および訪問介護事業所に転身・転職をお考えの場合は、サービス提供責任者への就任も目標の一つにしてみてはいかがでしょうか。