放課後等デイサービスとは?役割や仕事内容、必要な資格も解説!
放課後等デイサービスは、未成年の障がいをもった子どもまたは発達に特性のある子どもが放課後や長期休業期間中において利用できるサービスです。
健常者と同じ施設では、受ける教育内容が難しかったり、友達が作りづらかったりするため、放課後等デイサービスは「障がい児の学童」とも呼ばれています。
では放課後等デイサービスは一体どんなサービスを提供していて、利用するにあたってどんな条件があるのでしょうか。
今回は放課後等デイサービスの仕事内容や必要資格などを詳しく解説します。
放課後等デイサービスについて詳しく知りたい方や実際に働いてみたいと思っている方は参考にしてみてください。
1. 放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスとは、6歳~18歳までの障がいをもった子どものための福祉サービスです。
活動時間は主に放課後や長期休業期間中で、児童発達支援管理責任者が自立支援や生活充実を図るために「個別支援計画」の作成を行います。
国語や算数、パソコン教育などで基礎学力向上を図ることや、地域交流や創作活動を通して子どもの成長をサポートします。
放課後等デイサービスは通う施設によってさまざまなプログラムがあるため、スタッフとして働くことを考えている方はどんな取り組みを行っているのか確認するようにしましょう。
2. 放課後等デイサービスの役割
放課後等デイサービスが持つ役割について、厚生労働省は以下の3つと定義しています。
- 子どもの最善の利益の保障
- 共生社会実現に向けた後方支援
- 保護者支援
それぞれについて、詳しく説明します。
■子どもの最善の利益の保障
1つ目は、「子どもの最善の利益の保障」です。
これは児童福祉法第6条に基づき、6歳~18歳までの障がいをもった就学児に対して、日常生活で自立に繋がる訓練や社会との交流、そのほか必要となる活動を実施することや、支援が必要な障がいをもった子どもに学校外でのさまざまな活動を通じて、子どもの最善の利益の保障をするとともに健全育成を目指すことを役割としています。
■共生社会実現に向けた後方支援
2つ目は、「共生社会実現に向けた後方支援」です。
子どもが地域社会へ積極的に参加できるようにするために、ほかの子どもも含めた集団の中での生活を保障する視点が求められています。
また、放課後児童クラブや児童館などの一般支援施策を「後方支援」としての位置づけ、必要に応じて連携を図りながら適切な事業運営を行うことも要望されています。
子育て支援を利用する障がいのある子どもには保育所等訪問支援を積極的に実施したり、地域の障がい児支援の専門機関としての事業展開を担っています。
■保護者支援
3つ目は、「保護者支援」です。
放課後デイサービスでは、障がいのある子どもだけでなく、その保護者に対する支援も行っています。学校・家庭だけでなく、どんな場においても障がいのある子どもが自力で解決できるよう、自分でできることを増やす教育をして自立した生活が送れるよう図っています。
健常者のいる学童や児童クラブなどの場に馴染むのが難しい子どもやその保護者の居場所を確保・サポートする役割も担っています。
無料会員登録はこちら3. 放課後等デイサービスの利用対象者と利用方法
放課後等デイサービスは誰でも利用できるわけではなく、障がいをもった未成年が対象の福祉サービスで、利用する場合は自治体の発行する「障害児通所受給者証」が必要になります。
ここでは具体的な利用対象や利用方法について詳しく紹介します。
■放課後等デイサービスの利用対象者
放課後等デイサービスの利用対象者は、主に6歳~18歳までの障がいをもった就学児です。
小学校入学までは児童発達支援を受けることができ、また例外として高校を卒業した方でも必要性が認められれば、20歳になるまで利用可能です。
なお利用にあたって障がい者手帳の取得は不要で、医師などからサービスの必要性を認められれば自治体から案内を受けます。
■放課後等デイサービスの利用方法
放課後等デイサービスを利用するには、「障害児通所受給者証」が必要です。
これは自治体が発行するもので、住んでいる市町村で発行してもらいます。
障害児通所受給者証は取得後、1年に1回の更新をすることで継続的に所有可能です。
利用は有料ですが、9割は公費負担となるため利用者の負担は1割、金額にして1,000円前後で利用できます。
また、世帯所得によって負担上限があるため、所得が少ない世帯は無料になる場合があります。
4. 放課後等デイサービスでの仕事内容
放課後等デイサービスでは、障がいをもった子どもたちが将来的に自立した生活を送れるように、さまざまなプログラムや活動を通して教育をします。
また、一人ひとりに合わせた適切な支援を行うために保護者の方とのヒヤリングも欠かせません。放課後等デイサービスのスタッフは、子どもの成長やもっている能力を引き出す支援をするため、とてもやりがいがある仕事です。
近年放課後等デイサービスの需要が高まったこともあり、多くの民間企業が参入し、さまざまな事業所が増えています。
例えば、座学に特化した学習塾タイプや体を動かすことに特化したスポーツタイプ、パソコン・タブレットに特化したクリエイティブタイプや音楽活動に特化した芸術タイプなどです。
事業所によって教育の方向性は多岐に渡るため、勤める事業所によっては仕事内容は少々変わっていきます。
ここでは、放課後等デイサービスの主な仕事内容を、4つ説明します。
■自立支援・日常生活の支援
日常生活における基本動作や自立した生活の手助けをします。
子どもたちの些細な成功を肯定することで、成功体験を積み上げていき、子どもの自己肯定感を形成します。
また、学校内での教育や役割分担などを共有し、連携することで自立した生活への一歩となるように支援しています。
■創作活動の支援
子どもの持つ自由な発想力を引き出すために、創作活動を通して感性を育みます。
主に美術や音楽といった教科で、自己表現力の向上を図ります。
また、四季の変化を身近で感じてもらうために、自然に触れる機会を増やし、感性が豊かになるように努めます。
■地域交流のサポート
地域交流のサポートも行います。社会生活にほとんど制限のない健常者と比べ、障がいをもった子どもは制限が多い傾向にあります。
そのため、少しでもできることの幅を広げるために、他の福祉施設で行っている体験や交流などに参加させてもらいます。
障がいをもった子どもたちにとって地域交流は未知の体験であり、将来の自立した生活に向けたさまざまな能力を養うことが可能です。
■保護者の支援
子育ての相談や保護者の時間を保障するためにケアを一時的に代行する支援なども行います。
それにより保護者はゆとりを持つことができ、余裕をもって子どもと接することで子どもの発達に良い影響を及ぼすことが期待できます。
5. 放課後等デイサービスで働くには
放課後等デイサービスを行う事業所で働くには、以下の資格を取得している場合に優遇されることがあります。
- 児童発達支援管理責任者
- 児童指導員任用
- 保育士
- 普通運転免許
それぞれの資格を理解し、就職に役立てましょう。
■児童発達支援管理責任者
児童発達支援管理責任者は、放課後等デイサービスだけでなく、さまざまな児童福祉施設で活躍する資格・職業です。通称「自発管」と呼ばれており、放課後等デイサービスにおいては現場統括のような存在を担っています。
資格取得には、一定の実務経験と研修を修了する必要があります。
・実務経験
実務経験は、これまで従事した業務や所有資格で必要年数が変動します。
具体的には、国家資格を必要とする業務、または相談支援業務・直接支援業務のいずれか5年以上の実務経験に加えて、障がい者や児童を対象とした相談支援および直接支援の実務経験が3年以上あることという条件を満たす必要があります。
・研修
研修は、「基礎研修」と「実践研修」の2つの段階があります。
基礎研修は実務経験が2年に満たない状態でも受講でき、児発管の基礎とサービスのプロセスについて計26時間学びます。
実務経験の条件を満たした状態で、過去5年間で2年以上相談支援・直接支援業務に従事した経験をした方は「実践研修」を受けることができます。
サービスの提供や人材育成、地域連携など基礎研修よりも掘り下げた内容の研修を14.5時間受けます。
また、児童発達支援管理責任者は5年ごとに更新講習を受けるよう義務化されています。
児童発達支援管理責任者として現在従事している方、もしくは過去5年間に2年以上従事している方が受講の対象となります。
研修では、自らの業務の振り返りや更なるサービス向上に努めるための内容を計13時間学びます。
■児童指導員任用
障がい者のなかでも重度である児童を対象とした事業所に配置が義務づけられている職種ですが、厳密に児童指導員という資格はありません。
児童指導員として従事するには「児童指導員任用資格」が必要です。
この資格は、大学または大学院において社会福祉学・心理学・教育学を専修する学科を卒業または、児童福祉施設で2年以上の実務経験することで任用できます。
■保育士
保育士は保育のプロフェッショナルです。
就業場所は、保育園や幼稚園などが一般的ですが、発達障がいの子どもの療育のために放課後等デイサービスで就業する方が増えています。
保育士の資格を取得するには保育士の養成課程のある学校を卒業、または保育士試験に合格する必要があります。
■普通運転免許
一見放課後等デイサービスとは関係のない資格に思えますが、送迎業務を実施している事業所が多いため普通運転免許を取得していることはとても重要です。
また、放課後等デイサービスでは保育士や児童指導員を全体の半数以上配置しなければいけませんが、送迎業務や雑務などをする人材も必要になります。
そのため、普通運転免許を持っていることで採用に有利になります。
6. 放課後等デイサービスで働こう
放課後等デイサービスは障がいをもった未成年の子どもを療育するサービスです。
日常生活の支援はもちろん、自立した生活のためのさまざまなプログラムを提案してその手助けを行うため、障がい福祉の観点からとても重要な責務を担っています。
近年は、少子化が問題視されていますが、放課後等デイサービスは民間企業の参入もあり求められているスタッフの数は年々増加しています。
これまでに医療や福祉関連に従事していた方はもちろん、未経験や資格がなくても採用されるチャンスがあるので、児童に関する仕事に興味のある方は是非注目してはいかがでしょうか。