小規模多機能型居宅介護とは?サービス内容やメリット・デメリットを解説
小規模多機能型居宅介護は、在宅介護者に向けたサービスの中でも「通い」「訪問」「宿泊」を1つの事業所で受けられるのが特徴です。
実際に小規模多機能型居宅介護を利用するにあたり、費用や独自のルールなども気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、小規模多機能型居宅介護のメリットやデメリットを含め、どのような方に向いているのかについても解説していきます。
1. 小規模多機能型居宅介護ってなに?
小規模多機能型居宅介護とは、中重度の要介護者が自宅での生活を継続できるようサポートする施設です。
基本的には通いを中心としていますが、場合によっては訪問や宿泊のサービスも1つの事業所で利用できるのが特徴です。
しかし厚生労働省によると、2020年(令和2年)時点で小規模多機能型居宅介護は、全国に5,556事業所と年々増加傾向にあります。
■小規模多機能型居宅介護の対象者
小規模多機能型居宅介護を利用するには要介護認定を受けていることが前提で、加えて事業所と同じ市町村に住んでいる方が対象です。
また、要支援の方は「介護予防小規模多機能型居宅介護」のサービスが利用できます。
■小規模多機能型居宅介護の定員数
小規模多機能型居宅介護を行う施設は、1事業所あたりの登録定員が29人以内と定められています。
さらに、「通い」が1日あたり15人以内(一定の条件を満たす場合は最大18人)、「宿泊」が1日あたり9人以内と決められています。
小人数でサービスを受けられるため、利用者同士の距離も近く、自宅で過ごしているようなアットホームな雰囲気を感じられるのも、小規模多機能型居宅介護の特徴です。
■グループホームとの違い
小規模多機能型居宅介護と同じく、地域密着型のサービスにグループホームがあります。
どちらも小人数制の施設ではありますが、小規模多機能型居宅介護は短期的な宿泊ができるのに対し、グループホームは共同生活を行う居住型という点が大きな違いです。
2. 小規模多機能型居宅介護のメリット・デメリット
小規模多機能型居宅介護を検討する際は、メリットとデメリットをしっかりと把握しておきましょう。
■小規模多機能型居宅介護のメリット
・24時間365日利用回数の制限なく利用できる
小規模多機能型居宅介護は、サービス利用回数に制限がありません。定員に空きがある限り、24時間365日制限なく利用できます。
・月額制のため支払う金額があらかじめ決まっている
一般的な居宅サービスは利用した回数によってかかる費用が変わるのに対し、小規模多機能型居宅介護は月額制を導入しています。あらかじめ支払う金額が決まっているので、料金を気にすることなく安心して利用できるのがメリットです。
・通い・訪問・宿泊のサービスをまとめて利用できる
通い・訪問・宿泊のサービスが1つの事業所でまとめて利用できることは、小規模多機能型居宅介護の大きなメリットです。また、突然宿泊サービスを利用したい場合なども、空きがあれば臨機応変に対応できます。
■小規模多機能型居宅介護のデメリット
・併用できるサービスに限度がある
小規模多機能型居宅介護には併用可能なサービスが限られているため、複数の事業所からサービスを受けたい場合は、デメリットになる可能性があります。併用可能 | 併用不可能 |
訪問看護 | 居宅介護支援 |
訪問リハビリテーション | 訪問介護 |
福祉用具レンタル | 訪問入浴介護 |
往診・訪問歯科 | デイケア |
住宅改修 | デイサービス |
ショートステイ |
基本的には、小規模多機能型居宅介護内でカバーできるものが併用不可能です。
ただ、再度契約する手間はあるにしろ、1つの事業所からすべてのサービスを受けられることは、事業所をまとめたい方にとってはメリットでもあります。
・定員数が超えている場合すべてのサービスを利用できない可能性がある
小規模多機能型居宅介護には定員数があることはお伝えしましたが、定員数に達していた場合はすべてのサービスを受けることはできません。
希望の事業所がある場合は、事前に定員数の問い合わせをしておくことをおすすめします。
3. 具体的なサービス内容
小規模多機能型居宅介護で受けられる具体的なサービス内容や利用シーンについて、それぞれの面から解説していきます。
● 通い
● 訪問
● 宿泊
■通い
利用者の自宅から事業所までの送迎、健康状態のチェック、入浴介助、リハビリテーションなどのサービスが受けられます。
1日の定員はおおむね15名以下とし、短時間利用、入浴やリハビリなど一部の利用も可能です。
■訪問
事業所のスタッフが自宅に訪問し、食事や入浴、排泄、服薬などの介護サービスを行います。
通いや宿泊などで担当した顔見知りのスタッフが訪問するので、安心してサービスを受けられるでしょう。
■宿泊
1日の定員はおおむね9名以下とし、空きがあれば短期入所ができます。
1泊での利用も連泊での利用も可能です。
宿泊中は通いと共通したサービスが受けられ、急な宿泊にも対応してもらえます。
4. 30日ルールってなに?
30日ルールとは、宿泊サービス利用中に訪問診療を受けたい場合、サービス利用を開始する前30日以内に自宅で訪問診療を受ける必要があるというルールです。
宿泊サービスを受けたいと考えている方は必ず覚えておきましょう。
ただし、退院直後に小規模多機能型居宅介護サービスを利用しなくてはならない方は、この限りではありません。(令和2年度診療報酬改定による)
5. 小規模多機能型居宅介護の費用の目安
小規模多機能型居宅介護の費用は基本料金に加えて、その他加算費用や食費、おむつ代などが加わります。
これらはすべて介護保険適用外なので自己負担となり、施設および利用回数によって異なります。
基本料金は定額ですが、利用の仕方によって毎月の料金が変動することに注意しましょう。
また、単価は地域ごとに若干異なるので、あくまでも目安としてご覧ください。
要介護度 | 1か月の料金 | 単位数 | 介護保険1割負担 | 介護保険1割負担 | 介護保険3割負担 |
要支援1 | 34,380円 | 3,438単位 | 3,438円 | 6,876円 | 10,314円 |
要支援2 | 69,480円 | 6,948単位 | 6,948円 | 13,896円 | 20,844円 |
要介護1 | 104,230円 | 10,423単位 | 10,423円 | 20,846円 | 31,269円 |
要介護2 | 153,180円 | 15,318単位 | 15,318円 | 30,636円 | 45,954円 |
要介護3 | 222,830円 | 22,283単位 | 22,283円 | 44,566円 | 66,849円 |
要介護4 | 245,930円 | 24,593単位 | 24,593円 | 49,186円 | 73,779円 |
要介護5 | 271,170円 | 27,117単位 | 27,117円 | 54,234円 | 81,351円 |
6. 利用が向いている人・向いていない人
小規模多機能型居宅介護の利用方法によっては、向いている人と向いていない人がいます。
どんな人に向いていて、どんな人には向いていないのか、以下で見ていきましょう。
■小規模多機能型居宅介護の利用が向いている人
小規模多機能型居宅介護の利用は、以下の人に向いています。
● 家族の負担を減らしたい人
● 環境の変化が苦手な人
● 体調の変化が大きい人
小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所で「通い」「訪問」「宿泊」の3つのサービスが受けられます。
そのため、1回の契約で多数のサービスが受けられるのが特徴です。1つにまとめることで家族の負担を減らすことができますし、利用者にとっても環境の変化が少なくて済みます。
また、入退院を繰り返すような体調の変化が大きい方や、認知症の症状が出始めた方にとっては、あらゆるサービスを臨機応変に利用できる小規模多機能型居宅介護が向いています。
■小規模多機能型居宅介護の利用が向いていない人
小規模多機能型居宅介護に向いていないのは、以下のタイプの人です。
● サービス利用回数が少ない予定の人
● 現在利用している事業所やケアマネージャーを変更したくない人
● サービスに対しての希望や要望が多い人
小規模多機能型居宅介護は、サービス利用回数が少ない予定の場合、個別に契約するよりも費用がかさむ傾向にあります。
また、新たに小規模多機能型居宅介護を利用する場合、現在利用している事業所からの変更が必要です。
それに伴い、事業所に所属するケアマネージャーに担当が変わることになるため、現在利用中の事業所および担当ケアマネージャーを変更したくない方にとって、小規模多機能型居宅介護は不向きと言えるでしょう。サービスによって事業所を変えたい方にも、小規模多機能型居宅介護は不向きです。
小規模多機能型居宅介護を利用した場合、特定のサービスに不満があったとしても、そのサービスのみ別の事業所で受けることはできません。
7. まとめ
小規模多機能型居宅介護は3つのサービスがまとめて受けられる非常に便利な事業所です。
1つの事業所で柔軟なサービスを受けられるので、体調が安定しない高齢者を在宅で介護している方の負担軽減もつながります。
ただし、小規模多機能型居宅介護の利用には定員があるため、希望に合った事業所が見つかったら早めに問い合わせるようにしましょう。