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介護

2022年2月17日

老人福祉法をわかりやすく解説!介護保険法との違いや制定の背景も

介護や老人福祉に関する法律は、いくつか存在していますが、内容を知らないために、うまく活用できていなかったり、制度に違反していてもなかったりするケースがあります。家族の介護が必要な人や、介護の仕事に関わる人の中にも、制度の内容や法律が施行された背景を詳しく知らない人も多いでしょう。介護職として働くことになった場合、法律についての基礎知識を身に付けておくことが大切です。そこで、介護や老人福祉に関する法律の一つである老人福祉法の内容、施行された背景、法律に基づくサービスの内容について、詳しく解説します。

1. 老人福祉法とは


老人福祉法とは、高齢者福祉を管轄する施設、機関、事業について定められた法律のことを指します。都道府県や市区町村において、老人福祉計画作成の義務付け、6つの老人居宅生活支援事業、7つの老人福祉施設に関して規定されています。ただし、有料老人ホームは、老人福祉法に記載されている老人福祉施設には該当しないものの、老人福祉法の規制の対象となっている点を理解しておきましょう。

■老人福祉法の目的と背景

老人福祉法は、1963年の高度経済成長期に施行されました。背景としては、高度経済成長期に人が地方から都心へと流れたことで核家族化が深刻となり、家庭内でサポートし合うことが少なくなったからです。そのため、以前までは「高齢者の介護は家族間の責任である」とされてきましたが、高度経済成長期以降、それが困難となりました。そこで、家族や社会が大きく変化したことで浮き彫りになった介護問題への対応策として、老人福祉法が制定されることになったのです。

老人福祉法に基づき、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームといった施設が整備され、老人家庭奉仕員派遣事業の制度も整えられていきました。しかし、サービスや施設を利用するためには、所得制限が設けられていたため、サポートを必要としている高齢者を公費でサポートするといった目的で、社会福祉制度が設けられたのです。

なお、老人福祉法は、「高齢者の生活を安定させること」「健康を維持すること」「社会への参加を促すこと」を理念としており、高齢者の介護を目的とした法律ではないといった点に注意しましょう。

■老人福祉法の改正について

1970年代には、景気が上向きになり、70歳以上は医療費が無償化されるといった老人福祉法の改正が実施されました。しかし、オイルショックによって経済成長率が低迷し、さらに無償化の影響で病院の受診者数や入院者数が増えたため、医療費が高額になったのです。そのため、1982年には、老人保健法が施行され、医療費の一部を自己負担することになりました。同時に、ショートステイ、ホームヘルプ、デイサービスなどが制度化され、施設での介護がメインだった老人福祉を自宅で実施するという選択肢も増えました。

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2. 老人福祉法に基づく居宅サービス


老人福祉法に基づいて提供されるサービスのうちの「居宅サービス」を6つ紹介します。対象者や提供されるサービス内容について、確認しておきましょう。

■老人居宅介護等事業

老人居宅介護等事業は、65歳以上で精神上または身体上のどちらかに障害があり、日常生活を送る上で支障のある人が対象となります。自宅で排せつ、入浴、食事の介助、洗濯、料理、掃除などの生活に関する相談を受け、アドバイスする事業です。なお、介護保険法においては、巡回定期・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護などに該当します。介護保険法の対象外となっている場合は、自治体がサービスを提供してくれます。

■老人短期入所事業

<0> 老人短期入所事業とは、65歳以上で自宅での介護サービスを受けられない人が一時的に入所することを目的とした事業のことを指します。介護保険法においては、介護予防短期入所生活介護、短期入所生活介護(ショートステイ)のどちらかに該当します。

■認知症対応型老人共同生活援助事業

認知症対応型老人共同生活援助事業は、65歳以上で認知症のために日常生活に支障のある人が対象となり、他の利用者と共同生活する施設で、入浴、食事、排せつなど、生活のサポートを行う事業のことを指します。介護保険法においては、介護予防認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)や、認知症対応型共同生活介護に該当します。

■老人デイサービス事業

老人デイサービス事業とは、65歳以上が対象で、精神上または身体上に障害があり、日常生活に支障のある人や、介護を必要とする人が対象となり、施設で排せつ、入浴、食事のサポート、介護に関するアドバイスを行う事業のことを指します。介護保険法においては、介護予防通所介護(デイサービス)、もしくは通所介護に該当します。

■小規模多機能型居宅介護事業

小規模多機能型居宅介護事業とは、65歳以上が対象で、精神上もしくは身体上に障害があり、日常生活に支障のある人が対象となり、施設に通う、もしくは数日間泊まって機能訓練や介護サービスを提供する事業のことを指します。介護保険法においては、介護予防小規模多機能型居宅介護、もしくは小規模多機能型居宅介護に該当します。

■複合型サービス福祉事業

複合型サービス福祉事業とは、65歳以上が対象で、精神上もしくは身体上に障害があり、日常生活に支障のある人が対象となり、小規模多機能型居宅介護と、訪問介護を組み合わせたサービスを提供することを特徴としています。介護保険法においては、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)に該当します。

3. 老人福祉法に基づく施設サービス


老人福祉法に基づいて提供されるサービスのうち、「施設サービス」を4つ紹介します。対象者が細かく分類されているサービスもあるため、しっかりと確認しておきましょう。

■養護老人ホーム

養護老人ホームは、65歳以上が対象で、身体もしくは精神、または経済面や生活環境が原因で自宅での生活が難しい人が入所する施設です。養護老人ホームでは、機能訓練、食事の介助、日常生活に関するさまざまなサポートやサービスを提供しています。

■軽費老人ホーム

軽費老人ホームは、高齢のため一人で生活するのが不安だという人や、食事を作れないなど身体機能の低下が認められ、家族によるサポートを受けられない人が入所する施設です。無料もしくは安い料金で、食事サービスなどの日常生活をサポートしてもらえます。

軽費老人ホームは、「A型」「B型」「ケアハウス」の3種類に分かれます。いずれも60歳以上が対象ですが、夫婦で入居する場合は、夫か妻のどちらかが60歳以上であれば入所できます。

A型は、高齢のため一人で生活することに不安があり、家族のサポートを受けられない人が対象です。食事のサービス、日常生活における相談、お風呂に入るための準備、緊急時のサポートを行います。

B型は、A型の条件の他、自分で食事を作ることが可能な人が対象です。基本的に、食事は利用者自身で作り、その他の日常生活において困っていることの相談、お風呂に入るための準備、緊急時の対応などを行います。

ケアハウスは、体の機能低下によって日常生活に支障があり、家族のサポートを受けられない人が対象です。食事のサービス、日常生活のサポートなどに加え、介護が必要だと判断された場合は、介護サービスも受けられます。介護保険制度に基づき、訪問介護や特定施設入居者生活介護などのサービスを受けることが可能です。

■特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは、65歳以上で精神もしくは身体に障害があるため、常に介護が必要であるものの、自宅で介護してもらうのが難しい人が対象となります。食事、排せつ、入浴の介護の他、援助、相談など、社会生活を送る上で必要なサポートや、健康管理、機能訓練などを行う施設です。

■有料老人ホーム

有料老人ホームは、利用者の年齢制限については施設やホームごとによって異なります。高齢者が対象となり、排せつ、入浴、食事の介助、食事の提供といったサービスを行います。その他、掃除、洗濯といった家事、健康管理もしてくれます。

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4. 老人福祉法と介護保険法の違い


老人福祉法と混同しやすい法律としては、「介護保険法」が挙げられます。どのような違いがあるのか、施行された背景や目的などについてチェックしてみましょう。

■施行年

老人福祉法は、1963年7月に施行されました。一方、介護保険法は、2000年4月に施行された法律です。

■背景

老人福祉法の主な目的は、高齢者福祉の原理を明確にし、高齢者が精神的・身体的な健康を維持して生活を安定させることです。

一方で、介護保険法は、介護を必要としている人を社会でサポートする目的で定められました。国民が必要なサポートを受けるために介護保険制度を設け、事業者、施設、給付、介護認定に関して取り決めています。施行された背景としては、地方の介護福祉や高齢者・認知症の人に対する社会の関心が高まったこと、急速な高齢化で社会保障費用が膨大になったことも挙げられます。また、バブルが崩壊してから経済が停滞していることも、施行された背景の一つであるといえるでしょう。

■目的

老人福祉法は、高度経済成長期に核家族化が進み、「家族間での介護ができない」という家庭が増えたことを背景として定められています。一方で、介護保険法は、年齢を重ねたことにより、病気を発症したり、介護が必要になったりした際に、高齢者の能力に合わせて社会生活を営めるようにサポートすることを目的として定められました。需要に応じた福祉や保健医療サービスを提供するために介護保険制度を設け、福祉の発展や保健医療の向上を目的としています。

5. 高齢者福祉を支える老人福祉法を理解しよう

高齢者が精神的・身体的な健康を維持することを目的として定められた老人福祉法によって、サポートが必要な高齢者に対し、的確なサービスを提供できるようになりました。
老人福祉法は、介護保険法とは内容が異なりますが、施行された背景や目的はほぼ同じであるといえます。

介護職として働く場合は、介護や老人福祉に関する法律について、さらに理解を深めていきましょう。

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井上優喜

求人あるあるの求人作成・記事執筆を担当。 介護士として様々な施設形態での勤務実績あり。求職者目線での記事作成が得意。

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