介護療養型医療施設とは?費用や廃止後に新設された介護医療院も解説
介護療養型医療施設とは、サポートを必要とする高齢者が入居する有料老人ホームや特別養護老人ホームと同じ介護施設の一つです。他の介護施設と比較してみると、医療ケアを重視しているため、持病のある人や治療後の療養に不安のある人にとっては、安心できる施設であるといえるでしょう。この記事では、介護療養型医療施設に入居するための費用、サービス内容、特徴、代替される施設などについて紹介します。介護職への転職を考えている方など、介護療養型医療施設について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1. 介護療養型医療施設とは
介護療養型医療施設は、要介護度の高い人を対象とした施設です。サービス内容については、療養を目的としているため、介護老人保健施設や特別養護老人ホームとは異なります。介護療養型医療施設は、リハビリテーションや医療が提供される場所であり、他の介護施設と比較してみても、医療体制が整っています。
また、他の介護施設と比べて看護師の数が多く、痰の吸引やインスリン注射なども行うことが可能です。介護療養型医療施設は、医療法人が運営していることが一般的であり、他の介護施設と同様、公共の施設として扱われています。
なお、介護療養型医療施設は、医師、看護師、管理栄養士、介護福祉士らによって、看護や医療を提供する場所です。レクリエーションはほとんど実施されず、療養サービスを提供されるといった点が特徴です。
あくまで医療や療養目的のサービスが多いため、介護に関わる職員であっても、医療の知識があると働きやすいでしょう。
■入居の条件
介護療養型医療施設に入居するための条件は、施設によって異なるものの、医療管理が必要な65歳以上の高齢者、かつ要介護1以上であることなどを挙げているケースが多いです。また、感染症の病気がある場合は入居できない可能性があるなど、施設によって入居条件が定められていることがあります。
入居時には、医師の診断書や意見書を提出しなければならず、医師の診断書、意見書、介護度、身体の状態を審査した上で、入居可能かどうかが決まります。なお、年齢については、要介護認定されていれば65歳以下であっても入居できる施設もあります。
■入居費用
介護療養型医療施設に入居するためには、居住費、食費、サービス費などがかかります。また、個室と相部屋では費用が異なり、それぞれの内訳は以下のようになります。
内訳 | ユニット型個室 | 従来型多床室 |
居住費 | 6万180円 | 1万1,310円 |
食費 | 4万3,350円 | 4万3,350円 |
その他費用 | 1万1,000円 | 1万1,000円 |
介護療養型医療施設サービス費 | 3万60円 | 2万9,460円 |
サービス加算 | 1,567円 | 1,567円 |
合計 | 14万6,157円 | 9万6,687円 |
個室を利用した場合、相部屋よりも居住費が高くなります。ただし、上記はあくまでも平均的な費用のため、施設によって異なる場合もあるでしょう。
■提供されるサービス
介護療養型医療施設では、医療に関するサービスを提供されるといった点が特徴です。
- 医師の診察
- 医師や看護師の医療ケア(痰の吸引、酸素吸入など)
- 介護職員による介護サービス
- リハビリテーション
介護療養型医療施設では、医師や看護師による医療ケア、リハビリテーションの他、介護職員が行う介護サービスが提供されます。痰の吸引、酸素吸入、経鼻栄養、胃ろうといったサービスを受けられますが、洗濯や掃除などの生活をサポートするサービスについては、提供されないことが一般的です。
2. 介護療養型医療施設のメリットとデメリット
介護療養型医療施設は、高齢者が利用する他の施設やサービスとは違った点が多々あるので、メリットとデメリットを詳しく理解しておくことが大切です。介護療養型医療施設のメリットとデメリットについて紹介します。
■メリット
介護療養型医療施設のメリットは、主に以下の6つが挙げられます。
- 医療ケアを受けられる
- 病状が悪化しても病院に移動しやすい
- リハビリテーションを受けられる
- 利用料金が安い
- 介護度が高くても入居できる
- 入居一時金が不要
介護療養型医療施設は、月額の料金が安く、入居一時金が必要のない施設が多いため、経済的に困難な方でも入居しやすいでしょう。
■デメリット
介護療養型医療施設のデメリットとして、主に以下の5つが挙げられます。
- 入居するのが難しい
- 相部屋になる
- 終身制ではない
- 医療費用が加算される
- 娯楽イベントは行われない
介護療養型医療施設は、相部屋になることが一般的なため、プライベートな部屋がほしい方には向いていません。また、介護療養型医療施設は、医療ケアを受けられる点がメリットですが、需要が高く、入居希望者が多いため、入居が難しいこともあります。
また、娯楽イベント等がないため、医療や看護を専門とするスタッフの比重が大きく、介護職員の業務内容も限定されている点もデメリットの1つと言えるでしょう。
無料会員登録はこちら3. 介護療養型医療施設の入居に必要な手続き
介護療養型医療施設は、申し込みをすれば、誰でも入居できるというわけではありません。入居前に審査が行われ、場合によっては入居できないこともあります。介護療養型医療施設に入居する場合は、入居したい施設で申し込み手続きを行います。施設の申込書に必要事項を記入し、施設の窓口に提出する必要があります。
その後、医師、施設の従業員、行政の担当者などが申込書を確認し、要介護度の度合い、入居を希望する人の症状、収入、資産、待機している期間などから検討し、入居できるかどうかを判断します。
4. 護療養型医療施設の入居難易度
介護療養型医療施設は、今後、厚生労働省により廃止されることが決定しているため、ある介護療養型医療施設では、現在90%以上の部屋が埋まっている状態で、入居するまでに数カ月の待機期間があります。つまり、入居するための難易度は「高い」といえます。一方、介護療養型医療施設に代わる施設としては、終末期医療に関するサービスの提供が加わった介護医療院が新設されました。入居希望者にとっては、さまざまな選択肢が広がっているのが現状です。
5. 介護療養型医療施設とその他施設の違い
介護施設はいくつか存在しますが、施設によって特徴や対象者が異なります。状況に応じて、利用者の介護度、どのようなサポートが必要なのかについて知っておく必要があるでしょう。以下では、介護施設ごとの特徴や違いについて紹介します。
■対象者が違う
介護療養型医療施設に入居するためには、要介護1の認定を受けていなければなりません。一方、特別養護老人ホームは、要介護3以上で利用可能です。いずれの施設の場合も、介護保険制度に基づいているため、要介護度の条件が設けられています。
■介護療養型医療施設は病院
介護療養型医療施設は、長期間の介護や療養ができる施設のことを指します。慢性的な病気を療養する目的があるため、病院での治療を終え、症状が安定していたとしても、長期間療養をしなければならない人が利用する施設です。そのため、介護施設というよりも、病院をイメージした方が雰囲気を理解しやすいでしょう。
■介護療養型医療施設は終身制ではない
介護療養型医療施設では、基本的な排せつや食事といった介護サービスが提供されますが、「医療機関である」といった点に注意が必要です。特別養護老人ホームとは異なり、病気からの回復をサポートするための医療ケアがメインで、体調が回復したら退所しなければならないのが一般的です。
■老人保健施設にはデイケアサービスがある
老人保健施設は、病院と特別養護老人ホームの中間的といえる施設です。作業療法士や理学療法士といった専門知識を持つスタッフがリハビリテーションを行ったり、短期間宿泊ができたりといったサービスを提供しています。老人保健施設は、入居者が自宅で過ごせるように、リハビリテーションの支援をすることが目的であり、数カ月間しか利用できない点が特徴です。
無料会員登録はこちら6. 介護療養型医療施設は廃止に
介護療養型医療施設は、今後廃止されることが決定しています。なぜ廃止され、代替となる施設が新設されたのか疑問に思う方もいるでしょう。そこで、介護療養型医療施設が廃止されることになった背景、理由、今後利用することになる施設に関して、解説します。
■介護療養型医療施設が廃止になる理由
国が介護に関する調査を行った結果、介護療養型医療施設には、医療ケアの必要な患者と、医療ケアの必要がない患者が同じくらいの割合で入居していることが明らかになりました。つまり、医療ケアの必要がない高齢者も入居していることが明白になったことから、国がこの調査結果を問題視し、介護療養型医療施設が廃止されることが決定しました。以降、医療ケアが必要な高齢者の入居に特化した施設として、介護医療院が創設されることになりました。
7. 新設の「介護医療院」とは?
介護医療院は、医療ケアを受けることが可能で、一定期間の療養もできる施設のことを指します。要介護者を対象とした介護施設であり、日常生活において不便なことへのサポートや、医療的な面でのサポートが充実しているため、高齢者を広く受け入れることが可能です。介護医療院は、介護療養型医療施設の代わりの一つとして注目されており、介護療養型医療施設で実施されていた医療ケアも行えるといった点が特徴です。
■「Ⅰ型・Ⅱ型」と「医療外付け型」の違いとは
介護医療院は、「Ⅰ型・Ⅱ型」「医療外付け型」に分類されます。
・「Ⅰ型・Ⅱ型」とは
Ⅰ型は、要介護度の高い利用者を対象としており、医療ケアを行う介護療養型医療施設と同じものとして扱われています。
Ⅱ型は、入居者が自宅で過ごすことを目標に、リハビリテーションなどの補助を行う介護老人保健施設と同じ施設として扱われていることが特徴です。Ⅰ型は、Ⅱ型と比べて重い病気を抱える利用者が対象となっています。
・「医療外付け型」とは
医療外付け型は、医療機関に利用者の住む施設が併設されています。また、病気を患った後、容態の安定している人が対象となっており、部屋は個室が13平方メートル以上と定められていることが特徴で、有料老人ホームと同等の扱いであるといえるでしょう。
8. 介護療養型医療施設を理解しよう
介護療養型医療施設は、要介護度の高い人が対象となっている施設で、レクリエーションやイベントは実施されません。医療ケアがメインであるため、医師や看護師がおり、利用者にとっては、安心できる点が魅力です。医療や看護に関わるスタッフが多いですが、介護職員にとっても、医療知識をつけながら働ける場でもあります。
今後、介護医療院という施設に代替されていきますが、終末期医療・看取りも行っているため、より医療知識が必要な現場となっていくでしょう。介護職としてさらにスキルアップしたい方は検討してみてください。
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