介護福祉におけるアセスメントとは?重要性や実施方法、事例も解説
介護職で働いていると、「アセスメント」という言葉を耳にした経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アセスメントは介護分野において、利用者一人ひとりに合ったサービスを提供するために欠かせない過程です。
この記事では、アセスメントが具体的にどのようなものか、実施の方法や事例を挙げながら解説します。介護職に従事して日が浅い方や介護の勉強を始めたばかりの方も、ぜひご一読ください。
1. 介護福祉におけるアセスメントとは?
「アセスメント」とは、本来「評価」「査定」という意味を指す言葉であり、客観的な視点をもって解決すべき課題を分析するために行われます。
介護福祉においては、利用者が直面している課題を把握・分析し、どのようなサービスが必要なのか、何を望まれているのかを明確にすることが目的です。
■介護福祉におけるアセスメントの重要性
同じ介護度でも、ADL(日常生活動作)や生活環境、家族構成、要望が利用者によって異なるため、すべての方に同じケアを行うわけではありません。
たとえば、体の一部が麻痺していても自力で生活してきたという方にとって、車椅子介助がかえって生活を妨げてしまうという場合があります。
そのため、介護度ごとにサービスを統一してしまうと、一人ひとりにとって最適な支援ができないどころか、生活の自立度を低下させかねないのです。
そこで、利用者の生活状況や要望に応じたケアを行うために必要とされるのが「アセスメント」です。
介護福祉アセスメントでは、利用者の身体機能だけでなく価値観や考え方も含め、人間像全体を捉えなければなりません。
利用者が希望する生活を実現するには、それぞれに何が適した支援なのかを明確にすることが重要です。
■介護福祉におけるアセスメントとモニタリングの違い
介護福祉サービスの質を向上させる手段に「モニタリング」がありますが、アセスメントと混同されがちです。
アセスメントは介護過程の第一段階として「利用者の生活状況や要望を把握する」のに対し、モニタリングは定期的または必要に応じて「ケアプランの実施状況や改善点を推し量る」ことを目的としています。
またモニタリングでは、利用者の身体状態や生活状況の変化に合わせて、ケアプランの修正を行うことが必要です。
2. 介護福祉のアセスメントにおける必要項目
アセスメントは、具体的に以下のような項目に沿って行われます。
【介護福祉のアセスメントにおける必要項目】
● 利用者本人の目標および要望
● 利用者家族の目標および要望
● ADL(日常生活動作)
● 生活環境
● 介護状況
● 生活の様子
● 家族構成
● 趣味
介護福祉では、利用者本人のことを理解するため、多角的な面からアセスメントが行われます。
交友関係や家族の生活状況、地域などの周辺環境も含めて必要なケアを考えることが大切です。
3. 介護福祉のアセスメントはいつ誰が実施する?
アセスメントは、基本的にサービスの利用を開始する前など、ケアプランを作成するケアマネジャーによって実施されます。
ケアプランとは、利用者が介護サービスを受けるにあたって配慮すべき事項や具体的なケア内容を盛り込んだ介護計画書のことであり、内容にはアセスメントで得た情報が反映されます。
またケアプランは利用開始時だけでなく、介護サービスを受けている間も見直しが必要です。
利用者の身体状態や生活環境はサービス利用中も変化していくため、ケアプランの見直しに合わせてアセスメントも随時行われるものと考えておきましょう。
さらに事業所によっては、ケアマネジャー以外の介護職員がアセスメントを実施する場合もあります。
つまり介護職の方であれば、誰でもアセスメントに従事する可能性があるということです。
4. 介護福祉のアセスメントを実施する際のポイント
介護福祉の現場でアセスメントを行う際は、ただ重要事項にしたがって聞き取りをするだけでは、よりよい介護サービスの実施につながりません。
そのため、以下のようなポイントに沿って取り組むとよいでしょう。
■事前準備を行う
アセスメントを実施する際は、情報収集などの事前準備を行なっておきましょう。
ケアプランを作成するために多くの情報を得る必要がありますが、利用者やその家族の状況によって思うように情報が集まらない場合も考えられます。
そのため、利用者の身体状態について、主治医や看護師に確認したり基本情報をまとめたりしておくことが大切です。
利用者の負担や健康状態に配慮して、あまり時間をかけすぎないようにしましょう。
■訪問マナーを確認しておく
居宅訪問でアセスメントを行う場合は、基本的な訪問マナーを確認しておきましょう。
利用者やその家族に時間を取ってご自宅へと招いてもらうため、失礼のないようにすることが大切です。
訪問する日時をあらかじめ伺い、身だしなみや言葉遣いに注意してください。
お茶やお菓子をすすめられた場合は、丁寧に断りましょう。
■具体的な質問をする
利用者やその家族の悩みや要望を的確に把握するには、具体的な質問をすることがポイントです。
事前に収集した情報を元に要点をまとめ、利用者の本音を引き出すような質問を投げかけましょう。
たとえば「はい」「いいえ」で回答できる簡単な質問から、「どうしてそう思いますか?」と内容を掘り下げた問いかけをすると、相手も答えやすくなります。
■アセスメントシートを利用する
アセスメントシートとは、アセスメントで聞き取った内容をまとめるためのツールです。
事業所ごとにフォーマットが決まっており、その内容を元にケアプランが作成されます。
介護方針や目標設定にも役立つことから、介護サービスの質を向上させられるという点で大いに活用できるでしょう。
また、利用者の身体状態や生活環境、要望などが一目で把握できるため、他の介護職員や専門職との情報共有にも利用されます。
アセスメントシートの書き方やポイントについて、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
5. 介護福祉におけるアセスメントの実施事例
最後に介護福祉アセスメントの実施事例を紹介します。
どのような方にどのような分析と評価が行われたのか、ケーススタディとして押さえておきましょう。
■ケース①
現在一人暮らしの要介護1の女性は、排せつ・入浴・食事などの日常生活動作を自力で行えます。
ただし、歩行や立ち上がりなどが不安定であり、別居する息子さんは日常生活において転倒やケガがないか心配されているようです。
しかし、要介護者本人に行なったアセスメントによれば、息子家族に迷惑をかけたくなく、できる限り自分で生活していきたいとの考えがあります。
そのため、要介護本人の生活歴や住環境の聞き取りも行い、週2〜3回程度のデイサービス利用をすすめました。
ケアプランでは、安全で自立的な生活を支援することを目的としています。
要介護本人とその家族の要望を尊重するサービス内容で、気持ちのよい支援につなげられました。
■ケース②
要介護3の男性は配偶者の方と2人で暮らしており、息子さんは仕事の関係で県外に住んでいます。
日常生活動作のほとんどにおいて全面的なサポートを必要とし、歩行や立ち上がりも1人では困難です。
最近は認知症の症状も出始め、配偶者の腰痛が悪化してしまったことから、特別養護老人ホームへ入居する運びとなりました。
アセスメントでは、配偶者がこれまでしてきた介護の内容や息子さんが今後支援できることについて聞き取りました。
要介護本人からは趣味や日頃の楽しみなどを聞きつつ、介護施設への入居に前向きであることも確認できています。
歌や踊り、人との交流が好きなことからレクリエーションが充実している施設をすすめ、スムーズな介護サービスへの移行ができました。
6. まとめ
介護福祉におけるアセスメントとは、利用者の状況を把握・分析し、どのようなサービスが必要なのか明確にすることです。
またサービスを利用する前に、このアセスメントを元にケアプランが作成されます。アセスメントを的確に行えば、利用者本人やその家族にとってよりよいサービスが提供できるようになり、介護職従事者としての大きなやりがいも得られることでしょう。