認知症の方向けのレクリエーションにはどんなものがある?効果や注意点も紹介
認知症の高齢者にとって、レクリエーションは症状の進行を遅らせる効果をもたらす重要な活動です。今回は、認知症の方のレクリエーションについて、その効果や注意点、おすすめの方法などをご紹介します。認知症の方と行うレクリエーションへの理解度を深めるために、ぜひご活用ください。
1. レクリエーションは認知症の方にどんな効果がある?
レクリエーションはただ楽しむだけでなく、認知症の方にとっていくつかのメリットがあります。ここでは、レクリエーションがもたらす認知症への効果を見ていきましょう。
■脳の活性化につながる
レクリエーションは、物事を考えたり手を動かしたりすることで、脳を活性化させます。脳トレや手芸、軽い運動などのレクリエーションは、脳の多くの機能を使うため、認知症の予防や症状の進行を遅らせる効果があると言われています。
■人とのコミュニケーションの機会が作れる
認知症の方は、認知症の症状を知られたくない、周囲に迷惑をかけたくないなどの理由で、人とのつながりを断ちがちです。また、地域コミュニティに参加しなくなったり働くのが難しくなったりして、人と交流する機会が減り、孤独を感じるようになるでしょう。
失われた人間関係を取り戻すためにも、 楽しみながら自然に他者との交流やつながりを増やせるレクリエーションは役立ちます。
■心身機能の維持、向上する
身体機能は、加齢とともに低下していきます。高齢や病気などで体を動かす機会が少なくなると、筋肉や骨、内臓がうまく働かなくなり、心身のさまざまな機能が低下します。 とはいえ、筋力や体力は衰えてしまった後からでも、軽い運動である程度まで取り戻すことができると言われています。そのため、適度な運動を伴うレクリエーションは、心身機能の維持・向上に効果的です。
■生活の質を高める
認知症の高齢者は、自身の症状に対して不安や絶望感を抱いていることが多いと言われています。また、認知症の症状により、できないことが増えると自信を失ってしまうこともあるでしょう。なぜなら、本人に無力感や自信を失っているなど自覚症状がある状態で、能力を試すような活動は、その人の存在を否定することになりかねないからです。 しかし、レクリエーション活動は、楽しみながら気軽に取り組むことができます。レクリエーションは、こうしたネガティブな感情を和らげ、自信を取り戻すのに効果的です。
無料会員登録はこちら2. レクリエーションをする際の注意点
認知症にはレクリエーションが効果的ですが、いくつか注意点もあります。ここでは、レクリエーションを行う際に気を付けたいポイントをご紹介します。
■レベル設定は程よいものにする
レクリエーションのレベル設定はとても重要です。なぜなら、難易度が低すぎると認知症の方がバカにされていると感じ、自尊心を傷付ける可能性があるからです。
反対に、難易度が高すぎるとうまくできず、自信や意欲が削れることにつながります。そのため、一人ひとりの心身の状態に応じて、適度なレベルのレクリエーションを設定することが大切です。
■興味のもてる内容のレクリエーションを
認知症の方の脳は疲れやすく、興味がもてないこと、やりたくないことをするのは非常にストレスを感じます。
そのため、認知症の方が楽しくやりがいをもって取り組むことができるように、興味をもてるようなレクリエーションを提供しましょう。
■安全に配慮したレクリエーションにする
レクリエーションは、転倒やケガをしないよう安全な方法で行う必要があります。たとえば、椅子に座ったままできるレクリエーションは、転倒によるケガのリスクをかなり減らすことができます。
また、認知症の症状により予期せぬ行動をとることがあるので、周囲に危険なものを置かないように注意し、目を離さないようにしましょう。参加者の体調や体力を考慮し、無理なくできる内容を検討してください。
■気軽に休めるような時間管理にする
どんなに楽しいレクリエーションでも、時間がかかりすぎると、集中力の低下や痛み、ストレスの原因になるため、長く続けるのはよくありません。
特に、認知症の方は精神的な疲れやストレスから気持ちが不安定になりやすいので、無理に続けないよう注意が必要です。
疲労感やイライラが見られるようであれば、レクリエーションを変更したり適度に休んだりするとよいでしょう。
3. 認知症の方におすすめのレクリエーション
認知症の方におすすめのレクリエーションには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、効果的なレクリエーションの内容を解説します。
■運動や体操
体を使って行うレクリエーションは遊び感覚で楽しめ、ポジティブな気持ちで続けやすいという利点があります。また、心と体の機能を維持して向上させるだけでなく、頭の回転を活発にするのにも有効です。
体を動かすことで、便秘・筋肉のこわばり・血行不良などの体の不調が解消されるほか、 食欲増進や 眠りの質の向上など、生活に必要なリズムも整えられます。
【体を動かすレクリエーションの例】
グーパー運動 | 掛け声に合わせて両手の形を交互に変える手の運動 |
リズム運動 | 音楽に合わせて無理のない範囲で体を動かす運動 |
風船バレー | チームになり、風船を落とさないようにゴールまで運ぶゲーム |
■手芸や工芸などの手作業
芸術に関するレクリエーションは脳を刺激するだけでなく、達成感や生きがいを感じることができるため、多くの介護施設で取り入れられています。
完成した作品は飾ったり家族にプレゼントしたりと、作品作りを通して喜びや楽しみが生まれます。
【手指を使うレクリエーションの例】
手芸 | 縫いもの、編みもの、刺繍(ししゅう) |
工作 | 折り紙、塗り絵、絵画 |
■リラックスやリフレッシュ
高齢者は、心身の衰えによる不安や焦り、自信喪失、孤独感など、日常生活でさまざまなストレスを抱えています。リラックスを目的にしたレクリエーションを取り入れることで、リラックスやリフレッシュなど、ストレスの解消につながるでしょう。
【リラックスするレクリエーションの例】
ハンドマッサージ | 指や手のひらを優しくもみほぐす |
アニマルセラピー | 猫や犬とのふれあいを楽しむ、世話をする |
深呼吸 | ゆっくり深い呼吸をして気持ちを落ち着ける |
■回想法
回想レクリエーション(回想法)では、子どものころに夢中になっていた遊びや、日常生活で使っていた道具などの話をしてもらいましょう。当時を思い出し、他人と記憶を共有することで、認知機能の向上や感情の開放、社交性・積極性を高めることが期待できます。
【回想レクリエーションの例】
個人回想法 | 1対1で、特定の話題や当時の自分を語ってもらう |
グループ回想 | プライバシーに配慮しながら、全員が楽しく話せる話題を順番に話す |
■合奏や合唱
懐かしい歌のメロディーやワンフレーズが、記憶力や活力を取り戻すきっかけになることもあります。利用者の好きな歌や曲で、合唱や音楽鑑賞会を開催してみましょう。
楽器を演奏できる方には、演奏を依頼してみるといいかもしれません。楽器の演奏は、認知症になっても失われにくい、体が覚えている能力の一つです。
【合奏や合奏レクリエーションの例】
楽器演奏 | 歌に合わせてタンバリンやカスタネットを鳴らす |
カラオケ大会 | 子どものころの童謡、青春時代の流行歌を歌ったり聴いたりする |
4. まとめ
レクリエーションは、専門家だけが行う特別なものではありません。日常生活に取り入れられる活動や家事も、工夫次第で立派なレクリエーションになるでしょう。 いくつになっても生きがいとなるようなレクリエーションを、ご家族と専門職が一緒になって探してみてください。
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