介護のリハビリにおける体操について解説!種類や方法も紹介
高齢になると、体の悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
思うように動かない結果、体を動かす機会が減ってしまい、より身体機能が低下してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
そこでこの記事では、介護施設やデイサービスで取り入れられているリハビリ体操について見ていきましょう。
今よりも状態が悪くならないようにするために、ぜひ取り入れてほしい高齢者におすすめのリハビリ体操やその目的、具体的な方法などを詳しく紹介いたします。
1. デイサービスのリハビリ体操の目的
日帰りで利用するデイサービスでは、利用者が楽しく通うことができるようにさまざまなプログラムが用意されています。その中の一つがリハビリ体操で、利用者の健康や身体機能の向上を目的としたサービスとなっています。
■身体機能の維持・向上
リハビリ体操の最も大きな目的が、身体機能の維持・向上です。
高齢者は外出する機会が減り、体を動かさない期間が長くなってしまうと、筋肉の衰えや萎縮、うつ症状などの心身への影響が出始めます。
そのような状態が続くと、要介護状態になるなどの可能性が高まるので、体を動かして悪化を予防しようというのがリハビリ体操です。
■運動の習慣づけ
運動したほうがよいと思っていても、高齢者が自分で運動を習慣化させるのは簡単なことではありません。
デイサービスでは、高齢者が苦痛に感じず楽しく続けられる運動プログラムを組んでいるので、運動習慣のない方でも取り組みやすいでしょう。さらに、体の状態に合わせて負荷を増やすなど、段階的に自分に合った運動ができるのも、デイサービスでのリハビリ体操のメリットです。
■スタッフや利用者同士のコミュニケーション
デイサービスは、介護を受けるために通う場所ですが、同時にコミュニケーションの場でもあります。
スタッフや他の利用者と一緒にリハビリ体操を行うことで、1人で行う運動よりも楽しさが増し、孤独感が解消されるのは大きな魅力と言えるでしょう。
■利用者家族の負担軽減
リハビリ体操によって利用者の筋力や体力が上がることは、自立度の向上につながります。また、自分でできることが増える、体が動くようになることは、利用者家族の負担軽減になるでしょう。
無料会員登録はこちら2. 主な介護のリハビリ体操の種類と具体的な方法
ここからは、主なリハビリ体操の種類をご紹介していきます。
いずれも、日常生活で簡単に取り入れて行える体操なので、体力やお悩みに合わせて行うことができます。
デイサービスでだけでなく、自宅でも日常的に運動を取り入れたいという方にぴったりなリハビリ体操の方法を、詳しく見ていきましょう。
■<座ってできる!>介護のリハビリ体操
体力や身体能力が低下している高齢者でも安全に行うことができるのが、座ってできるリハビリ体操です。安定感のある椅子に座って行いましょう。
・胸のストレッチ
背中や首が曲がっていると骨折や誤嚥(ごえん)のリスクが高くなるため、胸の柔軟性が高くなるストレッチで予防していきましょう。1. ゆっくりと上半身を前に倒す
2. 戻す
3. ゆっくりと上半身を後ろに倒す
4. 戻す
この繰り返しを10回程度行います。
前へ倒すときは手で脚をつかみ、後ろへ倒すときは手を頭の後ろで組むと、より胸が伸びてストレッチ効果が期待できます。
・ボール押しつぶし体操
胸や肩、二の腕は、普段の生活の中でよく使う部分です。やわらかいボールを使った体操で、効果的に鍛えていきましょう。1. 胸の前で、両手のひらで挟むようにボールを持つ
2. 手のひらでボールをつぶすように7秒間力を入れる
この動作を6〜10回行います。
腕をなるべく水平に保つことがポイントです。
・タオルを使った膝伸ばし体操
O脚やX脚によって膝に痛みがある方は、太ももを鍛えましょう。1. 右脚の膝を伸ばし8〜10秒キープ
2. 右脚を下ろし、次は左脚の膝を伸ばして8〜10秒キープ
左右それぞれ10回ほど行います。
膝を伸ばしたとき、足先を天井に向けるように意識してみましょう。
■<立ってできる!>介護のリハビリ体操
要支援1・2程度の自立している方におすすめなのが、立ってできるリハビリ体操です。
・肩甲骨のストレッチ
肩や首のコリ改善や猫背・円背の予防に効果が期待できるのが、肩甲骨のストレッチです。呼吸機能の向上にも役立つでしょう。1. 足を肩幅くらいに広げて立つ
2. 両手をつないで腕を前に伸ばす
3. 手のひらを外側に、肘が内側を向くようにして腕を伸ばす
10回を3セット行います。
腕を伸ばすときは付け根から伸ばすようなイメージで、呼吸を止めないように意識して行うのがポイントです。
・体幹のストレッチ
体幹のストレッチは、体幹を鍛えるだけでなく呼吸機能の向上にもつながるおすすめのメニューです。1. 足を肩幅くらいに広げて立つ
2. 両手を頭の上に上げる
3. 手をつなぎ、体を右に倒す
4. 戻して、左に倒す
胸椎や腰椎がねじれる動きになるので、痛みのある方や脊髄(せきずい)疾患がある方は控えてください。
・股関節のストレッチ
体を動かさない生活が続くと、次第に股関節は硬くなって筋力も衰えてしまいます。日常の動きをスムーズに行うためには、股関節をしなやかな状態にしておくことが大切です。1. 椅子の背もたれや壁などに手をつき、体を支える
2. 反対側の脚を曲げて、足の甲を手で持つ(前太ももを伸ばす感じ)
3. 反対側の脚も同様に行う
さらに膝や股関節、骨盤のあたりをほぐすための運動を行います。
1. 両方の手のひらをそれぞれ膝の上に乗せる
2. そのまま膝を軸にして、縁を描くようにストレッチ
片足を上げる運動は転倒しないように、体を支えられる場所を用意して行いましょう。膝を回す運動もふらつきやすいので、注意してください。
■<転倒予防に最適!>バランスを鍛えるリハビリ体操
体のバランスが衰えると、転倒しやすくなる危険性が高まります。高齢者の転倒は大きなケガにつながることもあるので、筋力を鍛えて転倒予防に努めましょう。
・足首のストレッチ体操
私たちが普段歩くときに重要な役割を果たしているのが、足の指と足首です。地面をしっかりと足の指でつかんで歩けるようにするために、足首の体操を行なってバランスを鍛えましょう。1. 椅子に座って、片足を少し後ろに引く
2. 後ろに引いた足のかかとを浮かせて、つま先立ちの状態にする
3. かかとを戻し再びつま先立ち
左右それぞれ10回を3セット行います。
外を歩く機会が少ない方も、室内で無理せず行うことができるのでおすすめです。
・バランスディスクを使用した骨盤運動
体幹を鍛え、筋力アップを目的としたバランスディスクは、高齢者のリハビリ体操にも活躍します。骨盤の筋肉を鍛えることができるので、尿や便の失禁予防や、便秘解消の効果的です。1. 椅子の上にバランスディスクを置いて座る
2. 骨盤に手を当てて、左右のかかとを交互に上げる
ふらつく可能性があるため、頭の位置が動かないように注意しながら行いましょう。
・バランスボールを使用したバランス体操
バランスボールは、体幹トレーニングや腰痛の軽減、体全体のバランスの向上などさまざまな効果が期待できる運動器具です。1. バランスボールの上に座る
2. 両腕を床と水平になるように左右に伸ばす
3. ゆっくりと体を左右に動かす
手を遠くに伸ばすようなイメージで動かすと、より体幹を鍛えられます。
■<食事前に取り入れたい!>おすすめの口腔体操
口腔(こうくう)機能が衰えると、摂食機能や嚥下(えんげ)機能が低下してしまいます。また、言葉をはっきりと発音できない構音障害につながることもありますので、積極的に取り入れていきましょう。
・首の準備体操
首が凝り固まっていると、食べものを飲み込むのが難しくなるため、毎日の習慣として取り入れていきたい運動です。1. 椅子に座り、両手は膝の上に置く
2. ゆっくりと大きく首を前後左右に動かす
5回を1セットとして行います。
首を後ろに動かす際は天井が見えるくらい、左右に動かす際は耳を肩にくっつけるようなイメージで行いましょう。
・頬の体操
頬の筋力が衰えていると咀嚼(そしゃく)がしにくくなったり食べこぼしたりします。1. 頬を大きく膨らませる
2. 頬の内側を吸って、頬を凹ませる
10回を目安に行います。
道具も要らず、座ったまま行えるので、気軽に頬を鍛えましょう。
・「あいうえお体操」「パタカラ体操」
口や舌の筋肉を使うことで、食べたり飲み込んだりする力を高める効果が期待できます。また、大きな声を発生することで腹圧をコントロールする力がついて、万が一の際も咳き込むことができるでしょう。1. 1音1音大きな声で、ゆっくり「あ・い・う・え・お」と発声する
2. もしくは、「パ・タ・カ・ラ」と発声する
5回程度を目安に、お腹の中から声を出すようなイメージで発声しましょう。
■<便秘や尿漏れに!>排便・尿漏れ体操
尿漏れや便秘といった排泄に関する悩みの原因にはいろいろありますが、その中の一つとして挙げられるのが骨盤底筋の筋力低下です。
・便秘の解消にピッタリな腹筋運動
スムーズな排便には腹筋の力が必要です。ベッドでできる簡単な腹筋運動で下腹の腹筋を鍛えて、便秘の改善を目指しましょう。1. 寝転がったまま、膝の裏に手を入れて抱える
2. 膝が胸につくようなイメージで、大きく呼吸をする
呼吸を止めずに行うことでお腹が温まり、腸内環境の改善が期待できます。
・便秘の解消にピッタリな足踏み運動
散歩に出かけることが難しい方におすすめなのが、寝たままできる足踏み運動です。1. 寝たまま膝を立てる
2. 息を吐きながら、片足ずつ胸に近づけるイメージで上げる
足を大きく動かす運動は下腹部の筋肉を鍛えることができるので、排便が難しい方におすすめの運動です。
・尿漏れ対策におすすめのドローイン運動
尿漏れの対策には、骨盤底筋群という体の内側にある筋肉の力を高める必要があります。寝たまま行うドローインで、効果的に筋力アップを目指しましょう。1. 寝たまま膝を立てる
2. お腹に手を置いて、鼻から大きく息を吸って、口からゆっくり吐ききる
腰の下(おへその真下くらいの場所)にタオルを敷いて、そのタオルを押し込むようなイメージで行うのがポイントです。お尻の穴を締めるような感じで行うと、より効果が高まります。
・尿漏れ対策におすすめのボール挟み運動
咳やくしゃみをするだけでも尿漏れしてしまう方におすすめなのが、ボール挟み運動です。1. 寝転がった状態で、太ももの間にボールを挟む
2. ボールを内側に潰すような感じに力を入れる
3. 力を緩める
ボールを挟む足に力を入れるときはお尻の穴を締め、足を緩めるときにお尻の穴も緩める動きを繰り返しましょう。ボールはビニール製などやわらかいものがおすすめです。
3. まとめ
普段の買いものや散歩などが億劫になってしまうと、どんどん体力や筋力が衰えてしまいます。だからこそ、できるところから少しずつでも運動を取り入れて、身体機能を高めることが大切です。
そのためにおすすめなのが、リハビリ体操です。簡単な運動を習慣化させることで、体力の向上や悩みの解消ができます。
日々のルーティンにリハビリ体操を加えることで、利用者の生活をサポートしましょう。